オンライン特化型の声優スクール『メイクリ』では、女声に関する相談を日常的に受けています。その中には、裏声を使って女声を出しているが、長く話すと喉が疲れる、あるいは声が続かなくなるという経験をしている方がいます。
男の娘としてのVR活動では、アバターや衣装は整えられます。立ち振る舞いや世界観も、工夫すれば形になります。
ですが、最後に残るのは「声」です。話した瞬間に生まれる違和感は、誤魔化しがききません。
裏声で出せている。でも長く話すと疲れる。疲れると声が崩れる。録音すると、後半の声が「何か違う」と分かる。
こうした違和感は、努力不足の問題ではありません。多くの場合、女声を「高さ」や「裏声」の話として捉えたまま、練習を続けてしまっているだけです。
本記事では、裏声を使い続けることで生じる疲れと崩れについて、特定の方法や練習論に寄らず、声帯への負荷という視点から掘り下げていきます。
裏声と地声では声帯の使い方が異なる
声には大きく分けて、地声と裏声があります。地声は声帯が厚く振動する状態です。裏声は声帯が薄く引き伸ばされた状態で振動します。
裏声は高い音域を出しやすい反面、声帯への負荷が地声とは異なります。また、裏声を維持するためには、声帯の状態を意識的にコントロールし続ける必要があります。
長時間にわたって裏声を使い続けることは、声帯に継続的な緊張を要求します。その結果として、疲れ、声のかすれ、音程の不安定さが生じることがあります。
疲れが崩れを引き起こす順序
裏声を使った女声が崩れるとき、多くの場合は段階があります。
最初は安定して出ている。時間が経つにつれて、声帯の疲労が蓄積する。疲労が増すと、裏声を維持するコントロールが難しくなる。その結果として、地声が混ざり始める、音程が下がる、声が途切れるといった状態が起きます。
これは「頑張りが足りない」という問題ではありません。裏声という発声の仕組みが、長時間の維持に向いていない可能性があります。
裏声が女声として成立する条件
裏声を使って女声を出すこと自体は、一つの方法として存在します。ただし、裏声だけで女声を成立させようとした場合に生じる制約があります。
感情が乗る場面。笑う場面。驚く場面。こうした瞬間は、裏声の制御が外れやすいタイミングです。また、長時間の使用では疲労の問題が出てきます。
裏声で「成立している場面がある」ことと、「継続的に女性として知覚される状態にある」ことは、別の状態です。メイクリでは、後者を女声の成立と定義しています。
「疲れるから休む」で解決しない問題
裏声での疲れに対して、「疲れたら休む」「無理しない」という対処をしている方がいます。
これは疲労を蓄積させないという意味では合理的です。ただし、疲れることで崩れるという構造は変わりません。休んで回復しても、また長く話せば同じ状況になります。
疲れが崩れの原因であるなら、その疲れが生じにくい発声の状態に移行しない限り、崩れは繰り返されます。「休めば続けられる」という前提で活動を続けることは、問題の先送りになる場合があります。
どうすればその状態に至るか、という方法については、本記事では扱いません。ただ、裏声での疲れと崩れが繰り返されているなら、現在の発声の方向性を確認する必要があります。
男の娘として疲れにくい発声で女声を学ぶことについて知りたい方は、男の娘として継続的に成立するための定義と条件をご覧ください。
「出せる瞬間がある」ではなく、「何度でも再現できる」まで行く。
疲れても、長く話しても、崩れない声。そこから初めて、男の娘は成立します。
「可愛い」に近道無し。


