オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 録音して聴き返しているにもかかわらず 「良くなっているのかどうか分からない」という相談を日常的に受けています。
録音して確認すれば客観的に評価できると思われがちですが、 実際には録音を聴くだけでは判断に必要な基準が揃わないケースがほとんどです。 「録音して聴けば何か分かるはず」という前提のまま進んでいると、 聴いた事実だけが積み重なり、練習の方向性が見えないまま時間が過ぎることがあります。
こうした前提のズレがあるままでは、 録音を繰り返しても「分からない」という状態から抜け出せません。
このページでは、 録音して聴いても声の変化が分からない理由と、 なぜそうなりやすいのかを見ていきます。
録音で確認することの限界
録音して自分の声を聴き返すことは、 練習の中で有効な手段のひとつです。
ですが録音を聴くことと、 声の状態を正確に評価することは別の話です。
録音を聴いて何かを判断するためには、 何をどう評価すればいいかという基準が先に必要です。
この基準がない状態で録音を聴いても、 「なんか変な感じがする」「悪くはない気がする」 という感想止まりになりやすく、 練習に活かせる情報が得られません。
理由① 何を基準に聴けばいいか分からない
録音した声を聴いても変化が分からない最大の理由は、 評価基準が自分の中にないことです。
イケボかどうかを判断するためには、 ・倍音がどのくらい鳴っているか ・息の量が適切かどうか ・喉に余計な力が入っていないか ・耳への届き方に負担がないか
といった要素を個別に確認する必要があります。
ですがこうした基準を持っていない状態で録音を聴いても、 「なんとなく良い」「なんとなく悪い」という印象だけが残り、 何をどう変えればいいかは見えてきません。
理由② 出している感覚と録音された音がズレている
声を出しているときの感覚と、 録音された音として届いている状態は、 大きくズレることがあります。
・響いているつもりでも、録音するとこもって聞こえる ・低く出しているつもりでも、苦しさが出ている ・良い声を出しているつもりでも、録音すると普通に聞こえる
このズレは骨伝導の影響によるもので、 自分の声を内側から聴いている感覚と、 外から聴こえる音とでは周波数の伝わり方が異なるために起きます。
録音を聴いて「思っていた声と違う」と感じるのは、 このズレが原因です。
ズレの存在を知らないまま感覚を頼りに練習すると、 実際の音とは異なる状態に向けて練習を続けることになります。
理由③ 比較する基準がない
変化を確認するためには、 過去の録音と現在の録音を同じ条件で比較する必要があります。
ですが多くの場合、 ・録音の環境や機材が毎回違う ・マイクとの距離や部屋の反響が変わっている ・体調や声の調子によって日々ブレがある
こうした条件のブレがあると、 同じ録音を聴いても変化なのか条件の差なのかが判断できません。
また、比較するための基準点となる録音を残していない場合、 そもそも何と比べればいいかが分からなくなります。
理由④ 録音環境によって聴こえ方が変わる
録音に使う機材や環境によって、 同じ声でも大きく異なって聴こえることがあります。
スマートフォンの内蔵マイクと外付けのコンデンサーマイクでは、 拾える音域や感度が異なります。
部屋の広さや壁の素材によっても反響が変わり、 録音された音の印象が変わります。
こうした環境の影響を考慮せずに録音を聴いても、 声自体の変化なのか環境の差なのかを区別することが難しくなります。
録音環境が整っていない状態での評価は、 判断の精度を下げる要因になります。
理由⑤ イケボの評価は聴感覚に依存する部分が大きい
イケボかどうかの判断は、 最終的には聴き手の感覚によって決まります。
耳に負担がないか。 自然に前に飛んでくるように聞こえるか。 長く聴いていても疲れないか。
こうした感覚的な評価は、 自分の録音を自分で聴いて判断することが難しい領域です。
自分の声には慣れがあるため、 客観的な評価がしにくくなります。
また、自分が良いと感じる声と、 他者が良いと感じる声が一致しないケースもあります。
録音を自己評価するだけでは、 こうした聴感覚のズレに気づくことができません。
理由⑥ 良くなっている変化は小さく、悪化は気づきにくい
声の変化は一度に大きく起きるものではなく、 少しずつ積み重なっていくものです。
そのため、 日々の録音を聴いても変化を実感しにくく、 「変わっていない」という感覚が続きやすくなります。
逆に、少しずつ悪化していく場合も、 変化が小さいために気づきにくくなります。
小さな変化を正確に捉えるためには、 定点で比較できる仕組みと、 変化を判断できる評価基準の両方が必要です。
録音して分からない理由は録音の問題ではなく評価の問題
ここまで見てきた理由に共通しているのは、 録音の頻度や質の問題ではなく、 録音を評価するための基準と仕組みが整っていないという点です。
録音はあくまで素材であり、 それを正確に評価できる基準がなければ、 判断に使える情報にはなりません。
自分の声が今どういう状態にあり、 何がどう変わればイケボに近づくのかという構造については、 イケボが成立する声の条件とその仕組みで詳しく扱っています。


