オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「女声を目指したいが、何から始めればいいか分からない」という相談を日常的に受けています。
まず練習を始めれば分かってくると思われがちですが、 実際には女声を目指す前に把握しておくべき前提があり、それを知らないまま始めると方向性が定まらないケースがほとんどです。 「とにかく始めれば道は開ける」という前提のまま進んでいると、 成立しない発声を積み重ねる状態が長期にわたって続くことがあります。
こうした前提のズレがあるままでは、 始めても「変わらない」「何をすればいいか分からない」という状態が続きやすくなります。
このページでは、 女声を目指す前に知るべきことと、なぜそれが必要なのかを見ていきます。
女声を目指す前に前提を把握することが必要な理由
女声を目指すとき、 多くの人がまず練習方法を調べて始めようとします。
ですが女声という領域には、 取り組みを始める前に把握しておくべき前提があります。
この前提を知らないまま始めると、 方向性が定まらないまま練習が進むことになります。
女声として成立している状態とは何か。 女声の成立を阻む構造的な問題は何か。 個別性の高さという女声の特性をどう捉えるか。
こうした前提を把握することが、 取り組みの出発点になります。
知るべきこと① 女声は声の高さで成立するものではない
女声を目指す前に最初に把握すべきことは、 女声は声の高さによって成立するものではないという点です。
高い声を出すことと、 女声として成立することは別の条件です。
高い声でも、発声全体に男性的な要素が残っていれば、 聴き手には男性の声として知覚されます。
逆に、それほど高くない音域でも、 発声全体の性質によって女性の声として知覚されるケースがあります。
「高くすれば女声になる」という前提で取り組み始めると、 声の高さを追いかけることに練習が特化していきます。
高さへの執着が、 女声の成立条件から外れた方向への積み重ねを生みます。
知るべきこと② 裏声は女声として成立した状態ではない
女声を目指す上で早い段階で把握しておくべき点として、 裏声と女声が異なるという点があります。
裏声は声帯の一部を切り替えた発声であり、 一時的に声質が変わりますが、 発声全体の性質が変わっているわけではありません。
裏声を出せることと、 女声として成立する状態に近づくことは、 必ずしも一致しません。
裏声を女声として扱ったまま練習を積み重ねると、 女声の成立条件とは異なる方向への積み重ねが続きます。
また、裏声を長時間使い続けることは、 喉への負荷が蓄積されるリスクがあります。
裏声と女声の違いを把握することが、 取り組みの方向性を誤らないための前提になります。
知るべきこと③ 女声の成立条件とは何か
女声を目指す前に把握すべき最も重要な点は、 女声として成立している状態の条件です。
女声として成立している状態とは、 裏声や声色の操作によらず、 発声全体が継続的に女性として知覚される状態です。
「継続的に」という点が重要です。
一瞬だけ女性的に聞こえる声や、 特定の条件下でだけ成立する声は、 女声として成立している状態ではありません。
条件が変わっても、 声量が変わっても、 話し続けても、 同じ性質で女性として知覚される状態が続くこと。
これが成立の条件です。
この条件を把握した上で取り組むことで、 取り組みの方向性を確認する基準が生まれます。
知るべきこと④ 個別性が極端に高い領域である
女声は個別性が極端に高い領域です。
発声の癖、身体条件、これまでの声の使い方などが複雑に影響するため、 同じ練習を行っても変化の出方や到達点は人によって大きく異なります。
「この方法で成功した」という体験談が、 そのまま自分に再現できるとは限りません。
「誰でもできる」という情報は、 女声の個別性の高さという実態とは一致していません。
個別性の高さを前提にすると、 汎用的な情報だけでは対応できない部分があることが見えてきます。
この前提を持つことで、 汎用的な情報に依存し続けることへの期待値を適切に設定できます。
知るべきこと⑤ 「できている感覚」は信頼できる基準にならない
女声を目指す過程で、 「できている感覚」が判断を誤らせる要因になることがあります。
一時的に女性的に聞こえる瞬間があると、 「女声が出せた」という感覚が生まれます。
この感覚は練習を続ける動機として強く働きますが、 発声全体が安定していない状態でも生まれることがあります。
「できている感覚」と、 女声として成立している状態は、 必ずしも一致しません。
感覚を基準にした判断は、 成立条件から外れた方向への積み重ねを「正しい方向」として評価し続けることになる可能性があります。
感覚ではなく、成立条件に照らした確認が必要です。
知るべきこと⑥ 喉への負荷に敏感である必要がある
女声を目指す上で、 喉の状態に敏感であることが重要です。
喉の違和感や痛みが出たとき、 「慣れの問題だろう」「努力の証拠だろう」と解釈してしまうことがあります。
ですが違和感は、 発声の方向性にズレがあることのサインである可能性があります。
女声として成立している状態に向かう発声は、 喉への過度な負荷を伴いにくいものです。
喉への負荷が続いている場合、 取り組んでいる発声の方向性を確認することが先になります。
痛みを我慢して続けることは、 女声に近づくことではなく、 喉を消耗させることにつながる可能性があります。
知るべきこと⑦ 独学では確認できない部分がある
女声を目指す上で、 独学では確認が難しい部分があることを把握しておく必要があります。
女声として成立しているかどうかは、 聴き手の知覚によって決まるものです。
自分の感覚だけでは、 正確な評価が難しい構造的な理由があります。
また、個別性が高い領域であるため、 汎用的な情報だけでは自分の状態に対応できない部分が出てきます。
独学で取り組む場合、 こうした限界を前提として把握した上で進むことが有効です。
確認できない部分があることを知らないまま進むと、 間違った方向への積み重ねが長期にわたって続くリスクがあります。
知るべきこと⑧ 女声を扱っている場所の多くが成立条件を曖昧にしている
女声を学ぼうとして場所を探すとき、 把握しておくべき点があります。
女声レッスンや女声指導を謳っている場所の多くが、 女声の成立条件を明確にしないまま提供しているケースがあります。
裏声を出せることを女声の目標にしている場所。 高い声を出すことを女声の基準にしている場所。
こうした場所では、 女声として成立している状態を目標にした指導が行われているわけではありません。
場所を選ぶ前に、 その場所が何を女声として定義しているかを確認することが必要です。
前提を把握した上で取り組みを始めることが有効
ここまで見てきたように、 女声を目指す前に把握すべき前提がいくつかあります。
高さが条件ではないこと。 裏声と女声は異なること。 成立条件は継続的な知覚であること。 個別性が極端に高いこと。 「できている感覚」は基準にならないこと。 喉の状態に敏感であること。 独学では確認できない部分があること。 指導の場所の定義を確認すること。
こうした前提を把握した上で取り組みを始めることで、 方向性が定まりやすくなります。
女声として成立するための条件の全体像と、 取り組みの方向性を確認するための判断基準については、 女声を始める前に知らないと喉を壊す発声の構造で詳しく扱っています。


