オンライン特化型の声優スクール「メイクリ」では 声優を目指している方から 「教室でのレッスンを続けているのに収録になると別人みたいになってしまいます」 という話を聞くことがあります。
通学型のスクールや教室でのレッスンを続けながら いざ収録の場に立つと練習したものが出てこないという経験は 声優志望者に起きやすい問題のひとつです。
この問題の背景には 練習環境と評価される環境のズレがあります。
マイクを前提にしない練習が積み重なるほど 収録環境でその練習が機能しにくくなる構造があります。
このページでは マイクを前提にしない練習が声優に通用しない理由を見ていきます。
声優の仕事はマイクの前で完結する
声優として成立するために必要な技術を考えるとき まず声優の仕事がどこで完結するかを確認する必要があります。
声優の仕事はアフレコスタジオや収録ブースで行われます。 マイクの前に立ち台本に書かれたキャラクターを声として表現します。 その音声が録音され映像や音声作品として使われます。
声優として評価されるのは このマイクを通して収録された音声です。
生の声がどれだけ良くても 収録された音声として機能しなければ 声優の仕事としては成立しません。
マイクを通した音声として機能することが 声優の評価基準の最終地点です。
この前提から逆算すると 練習がマイクを前提にしていないことは 評価される場と練習の場が最初からズレているということになります。
教室での発声とマイク前での発声は異なる
通学型のスクールや教室でのレッスンは 広い空間で行われます。
教室では声が壁に反響します。 講師との距離も数メートル単位になります。 広い空間に響かせる発声が自然な練習になります。
この環境で継続して練習すると 広い空間で遠くまで声を届かせる発声のコントロールが積み上がります。
マイクの前では状況が異なります。 マイクとの距離は数十センチです。 息の量、声量のコントロール、力みによるノイズが マイクに直接拾われます。
広い空間に響かせる発声でマイクに向かうと 音量が大きすぎる、ノイズが乗る、距離感が合わないという問題が出やすくなります。
教室での練習で積み上げた発声のコントロールは マイク前での収録に向けた調整が別途必要になる状態です。
骨伝導と収録音声のズレ
マイクを前提にしない練習が積み重なる問題のひとつに 骨伝導による聴こえ方のズレがあります。
自分の声を自分で聴くとき 骨伝導によって内側から伝わる音と 外から聴こえる音では周波数の伝わり方が異なります。
教室での練習では 自分が聴いている自分の声の感覚をもとに発声を調整します。 この感覚は骨伝導の影響を受けているため 外から聴こえる音とズレています。
マイクを通して収録された音声は 外から聴こえる音を記録したものです。 自分が感じている発声の感覚と 収録された音声として聴こえるものの間にズレが生じます。
マイクを前提にした練習では 収録するたびにこのズレを確認して調整する工程が積み重なります。
マイクを前提にしない練習では このズレを確認する機会がないまま 内側の感覚に最適化した発声が積み上がります。
収録の場で初めてこのズレに直面すると 練習してきたものが出てこないという感覚につながりやすくなります。
力みとノイズが収録で顕在化する
教室での練習では気づきにくいが 収録環境で顕在化する問題のひとつが 力みによるノイズです。
教室という広い空間では 発声時の力みによる息のノイズは空間に吸収されやすくなります。 講師との距離があるためノイズが聴こえにくい状態にあります。
マイクの前では力みによる息のノイズが直接拾われます。 語頭の息の混じり、語尾の詰まり、力んだときのブレスノイズが 収録音声にそのまま入ります。
教室での練習で力みが残ったまま発声が積み上がると 収録環境でノイズとして顕在化します。
力みに気づいて修正するためには マイクを通した収録音声を聴き返す工程が必要です。 マイクを前提にしない練習では この修正の工程が入らないまま力みが習慣化しやすい状態が続きます。
間の取り方が収録で崩れる理由
教室での練習で積み上がりにくいもののひとつに 収録としての間の取り方があります。
教室での練習では 講師と向き合いながら台本を読む形が中心になりやすいです。 この環境では間の取り方が対話の空気感に影響されます。
収録ブースでは マイクの前に一人で立ちモニターやヘッドフォンから音を聴きながら 台本に書かれた間を再現します。
対話の空気感に影響された間の取り方と 台本の意図を読んでマイク前で再現する間の取り方は 異なるスキルです。
教室での練習を続けても マイク前での間の取り方は別途積み上げる必要があります。 この差が収録の場で練習したものが出てこないという感覚につながりやすくなります。
マイクを前提にした練習環境が積み上げるもの
マイクを前提にした練習環境では 収録するたびにいくつかの確認と修正が積み重なります。
マイクとの距離感が適切かどうか。 息の量が収録として機能しているかどうか。 力みによるノイズが入っていないかどうか。 語頭と語尾の処理が収録音声として機能しているかどうか。 台本の間の取り方がマイク前で再現できているかどうか。
これらの確認と修正が毎回積み重なることで 収録環境で機能する発声のコントロールが身についていきます。
マイクを前提にした練習環境では 練習と本番の環境が近いということは 積み上げた技術が収録の場で崩れにくいということでもあります。
マイクを前提にしない練習との最大の差はここにあります。 練習が積み重なる方向が 評価される場に向かっているかどうかという問題です。
マイクを前提にした練習が声優に必要な理由
ここまで見てきた理由を整理します。
声優の仕事はマイクを通して収録された音声として評価されます。 教室での発声とマイク前での発声は求められる調整が異なります。 骨伝導によるズレはマイクを通して確認しないと修正できません。 力みによるノイズはマイクを前提にしない練習では気づきにくい状態が続きます。 間の取り方はマイク前での収録として機能させる練習が必要です。
これらがすべてマイクを前提にした練習環境でしか積み上がらない理由です。
マイクを前提にしない練習が声優に通用しない理由は 練習が積み重なる方向と評価される場がズレているからです。
声優レッスンとしてマイクを前提にした環境が機能する条件については マンツーマンの声優レッスンが成立する条件で扱っています。

