オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 喉声の相談を受ける中で 舌の筋肉の弱さが関係しているケースを多く見てきました。
発声において舌は重要な役割を持ちます。 ですが舌の動きは日常生活で意識されることがほとんどなく、 筋肉として鍛えるという発想が出てきにくい部位でもあります。
舌の筋肉が弱いと声にどのような影響が出るのか。 このページではその関係を見ていきます。
発声における舌の役割
舌は発声において複数の役割を担います。
まず子音・母音の形成です。 日本語の発音は舌の位置と動きによって大きく左右されます。 「た」「な」「ら」行など、 舌が歯や口蓋に当たることで作られる音は多く、 舌の動きが不正確だと発音が不明瞭になります。
次に咽頭腔の形成です。 舌の根元(舌根)の位置が咽頭腔の広さに影響します。 舌根が落ちた状態や後退した状態では 咽頭腔が狭くなり、声の共鳴スペースが失われます。
また舌の緊張状態も声に影響します。 舌が硬く緊張していると、 周辺の筋肉にも緊張が波及しやすく、 喉への負担が増します。
舌の筋肉が弱いと咽頭腔が狭くなる
舌の筋肉が弱い場合、 発声時に舌を適切な位置に保つことが難しくなります。
特に舌根の筋肉が弱いと、 声を出す際に舌が後退しやすくなります。 舌が後退すると咽頭腔の前後径が狭くなり、 声の共鳴スペースが縮小します。
共鳴スペースが狭い状態では 声の倍音成分が十分に鳴りません。 倍音が少ない声は平坦でこもった印象になり、 通りが悪くなります。
また咽頭腔が狭くなると 声が喉の中で詰まりやすくなります。 喉はこの詰まりを補正しようとして余計な力を使い始め、 喉声の状態が形成されます。
舌の筋肉が弱いと滑舌に影響が出る
舌の筋肉が弱い場合、 発音の精度にも影響が出ます。
子音を作るには舌が素早く正確に動く必要があります。 舌の筋肉が弱いと動きが鈍くなり、 音の立ち上がりが遅れたり 不明瞭な発音になったりします。
「ら行」の発音が不明瞭になりやすい人、 早口になると言葉が崩れやすい人は 舌の筋肉の問題が関係しているケースがあります。
滑舌の悪さと喉声が同時に見られる場合、 舌の筋肉の弱さが両方に関与していることが多いです。 滑舌だけを練習しても 舌の根本的な筋力が変わらなければ改善が限定的になります。
舌が緊張すると喉に影響が伝わる
舌の筋肉が弱い場合、 逆説的に舌が緊張しやすくなることがあります。
筋力が不足している状態で 声を出そう・はっきり話そうと意識すると、 舌が過緊張の状態になります。 舌の過緊張は舌骨周辺の筋肉に波及し、 喉頭の位置を不安定にします。
喉頭が不安定になると 声帯の振動が乱れ、声が詰まった印象になります。 これも喉声の発生経路のひとつです。
舌を動かそうとすればするほど喉が締まる感覚がある人は、 この過緊張のパターンに該当している可能性があります。
舌の問題は自己認識が難しい
舌の状態は本人には感覚として捉えにくい部分です。
舌が後退しているかどうか、 発声中に適切な位置にあるかどうかは 自分では確認が難しい状態にあります。
また舌の動きは無意識で行われているため、 意識して変えようとしても どう変えればいいかが分からないという状態になりやすいです。
「舌を前に出して発声する」という指示に対して 出しているつもりで出ていないケースや、 逆に出しすぎて別の問題が起きるケースも見られます。
舌の状態の問題は 外部からのフィードバックなしに 自己解決することが難しい領域です。
舌の筋肉の弱さと喉声は切り離せない
ここまで見てきたように、 舌の筋肉の弱さは喉声の形成に複数の経路で関与します。
咽頭腔の狭小化による共鳴の低下、 滑舌への影響、 舌の過緊張から喉への波及。
これらは独立した問題ではなく 連鎖して起きることが多いです。
喉声の改善を目指す場合、 発声量を増やすのではなく 舌を含む口腔内の筋肉全体の状態を 見直す必要があります。
声が喉に詰まる原因と、 響く声が成立するための条件については、 声の響きが成立する構造で詳しく扱っています。

