監修:空咲 一颯(現役声優・メイクリ代表)
男の娘とは、性別にかかわらず、本人が望む「かわいい自分」を実現している状態のことです。そのために見た目や服装や声を理想へ近づけ、性別を霞ませていきます。女装だけでは成立せず、年齢を若く見せるだけでも足りません。この記事では、男の娘の意味と特徴、なりたい人が声で失敗しない順番、そして練習にかかる年数まで、現役声優の立場で説明します。
男の娘とは(意味)
男の娘とは、性別など関係なく、本人の望む自己実現の形です。そのために見た目、服装、声などを理想に近づけ、性別を霞ませていきます。相手から見ると、男性要素を強く意識せずに、かわいさや中性的な魅力として受け取れる状態です。
メイクリが定義する男の娘は、容姿と声のバランスに違和感が無い状態です。「おはよう」や「ありがとう」の一言が、自然に女性として認識されるのが完成形です。服を着た状態ではなく、見た目と声と話し方が同じ印象へ向いていることを指します。
似た言葉に「女装娘」「女装男子」「男の娘キャラ」があります。使い分けや本人の名乗りの考え方は、男の娘と女装の違いで詳しく書いています。
女装との違い(要点だけ)
女装は、男性が女性的な服やメイクをする行為です。男の娘は、それを見た相手が男性要素を強く意識せずにかわいさや中性的な魅力として受け取る状態です。似ているようで、見られる場所が違います。
| 見られるもの | 女装 | 男の娘 |
|---|---|---|
| 服装 | 中心になる | 一部にすぎない |
| メイク | 見た目を変える | 違和感を減らす |
| 声 | 後回しにされやすい | 会話で必ず見られる |
| 話し方 | 気にされにくい | 印象を左右する |
| 年齢 | 隠す対象になりやすい | 見せ方の材料になる |
女装を否定する必要はありません。女装は入口になります。けれど女装だけを男の娘の完成だと思うと、話した瞬間に現実へ戻されます。言葉の使い分けと、本人の名乗りを尊重する考え方は男の娘と女装の違いにまとめています。
男の娘の特徴:見た目・声・話し方の3点
見た目
写真なら、見た目だけで成立します。角度を選べます。光も選べます。表情も一瞬だけ作れます。けれど会話では角度を選べません。服やメイクだけで作った印象は、会話の中で試されます。
| 写真で通る要素 | 会話で必要な要素 |
|---|---|
| 角度 | 声の安定 |
| メイク | 話し方 |
| 服装 | 反応 |
| 加工 | 自然さ |
| 若く見える表情 | 持続力 |
声
男の娘になりたい人が最も見落としやすいのは、声です。通話や配信やVRChatでは、声が出た瞬間に印象が変わります。見た目がかわいくても、声が低く硬いと違和感が出ます。笑い声や相づちに男性的な癖が残ると、一瞬で戻ります。見た目を作るほど、声の違和感は目立ちます。
| 見た目で作れるもの | 声で崩れるもの |
|---|---|
| かわいい印象 | 低い地声 |
| 中性的な雰囲気 | 強い語尾 |
| 若く見える写真 | 笑い声 |
| 柔らかい服装 | 雑な相づち |
話し方
女の子らしい話し方を、高い声で話すことだと思っている人は多いです。けれど話し方は、音程だけで決まりません。語尾、間、相づち、言葉の選び方、反応の柔らかさが印象を作ります。声が少し低めでも、話し方が柔らかければ印象は寄ります。仕草だけを真似ても、声と話し方が追いつかなければ演技っぽく見えます。
| 話し方の要素 | 見られる場所 |
|---|---|
| 語尾 | 強く切らない |
| 間 | 急ぎすぎない |
| 相づち | 雑に返さない |
| 笑い方 | 地声に戻りすぎない |
| 言葉選び | 乱暴さを減らす |
男の娘になるには:順番
1 どの場面で成立したいかを決める
男の娘になりたい人は、目に見える場所から変えたくなります。服、メイク、ウィッグ、写真、アバター。ここから入るのは自然です。ただし、その順番だけで進むと声が最後に残ります。見た目を作り込んだ後に声が合わないと、違和感は前より大きくなります。目指す場所によって、必要な練習は変わります。
| 目指す場所 | 先に見ること |
|---|---|
| 写真 | 見た目と角度 |
| 通話 | 声と話し方 |
| VRChat | アバターと声の一致 |
| 配信 | 長時間の会話 |
| 対面 | 見た目と動きと声 |
場所ごとに何が変わるかはVRChatの男の娘に女声は必要か、VRChatや通話で声が崩れる理由はVRChatで女声を出したい人が最初につまずくポイントで書いています。
2 まず、普通の会話を録る
男の娘として見られたいなら、まず普通の会話を録音してください。あいさつ、相づち、笑い声、驚いた時の声。ここが崩れるなら、まだ声をかわいく作る前の段階です。
| 先に見る声 | 理由 |
|---|---|
| あいさつ | 第一印象になる |
| 相づち | 会話で何度も出る |
| 笑い声 | 地声に戻りやすい |
| 驚いた声 | 素が出やすい |
| 疲れた時の声 | 長時間で崩れる |
3 声の土台を作る
男の娘の声で多い失敗は、低い声を隠すことだけに意識が向くことです。地声を消したい。男性っぽさをなくしたい。そう考えて高い声や細い声へ逃げます。しかし低さを隠すだけでは会話声になりません。声が弱くなり、息が漏れ、語尾が不安定になり、笑った時に地声へ戻ります。声を高くすることより、会話しても崩れないことの方が大事です。
土台の作り方そのものは、女声の出し方と可愛い声の出し方で練習の順番として書いています。この記事では繰り返しません。
4 萌え声は最後
可愛い萌え声に憧れる人は多いですが、萌え声は高いだけでは成立しません。高いのに耳が痛い声、息が多くて聞き取りづらい声、作りすぎて不自然な声は、かわいいより疲れる声になります。萌え声は飾りではなく、普通に話しても崩れない声の上に乗るものです。
| 勘違い | 起きること |
|---|---|
| 高くすれば萌え声 | 耳に痛い |
| 甘くすればかわいい | 作り声に聞こえる |
| 息を混ぜれば柔らかい | 言葉が弱くなる |
| アニメ声なら通る | 日常会話で浮く |
例:同じ一言で、どこが崩れるか
「おはよう」
かわいく、女性っぽい話し方を意識すればするほど、違和感は大きくなります。意識して作った女性らしさは、聞き手に「作っている」と伝わるからです。目指すのは、自然体で出せる女性特有の響き(フォルマント)です。そこへ行くには、倍音をカットするといった難しいボイストレーニングが必須になります。「おはよう」の一言が自然に女性として認識されたら、それが完成形です。
「え、なに?」(聞き返す)
自分から話すときは、比較的うまく保てます。崩れやすいのは、相手からのアプローチに対して反応を返す瞬間です。準備していない一言で、声が素に戻ります。ここは、経験回数を重ねていくのが一番早い。掛け合いのような実践的な練習で、反応の声も崩れないようにしていきます。
笑い声
笑うと地声に戻る人は多いですが、笑い方にも崩れにくいアプローチがあります。要素は、音の高低、イントネーション、アクセントの3つに分けられます。どれか1つが欠けていても不自然な声になります。3つを揃えてから、笑い声を録音して確かめます。
レッスンで多い相談(現役声優の観察)
メイクリのレッスンで、男の娘を目指す人に多い段階は3つです。名前や特定できる情報は書きません。
1番多い:土台ができていない
まず基礎的なボイストレーニングです。喉の筋肉、滑舌、声の強弱の使い分けを鍛えます。土台ができていないと、男の娘に相応しい声は出にくい。ここを飛ばして声色だけ作ると、一言は作れても会話で崩れます。
2番目:音の高低とアクセントが使い分けられない
音の高低の使い分けと、アクセントを強化していく段階です。ここで女性特有の響き(フォルマント)を取得し、低い声でも可愛さが崩れない土台を形成していきます。高さに頼らなくても女性として認識される、という感覚が初めて掴めるのがこの段階です。
3番目:倍音を削り、芯のある声へ
倍音を極力カットし、芯のある声を取得していく段階です。日常生活のどんな場面でも崩れない、完璧な男の娘の声を学んでいきます。「え、なに?」や笑い声のような、準備していない一言でも戻らなくなったら、ここまで来ています。
年齢について
男の娘になりたい人は、年齢を気にします。もう遅いのではないか。若い人に勝てないのではないか。逆に、まだ若く見えるから何とかなると思う人もいます。年齢は確かに印象へ影響しますが、年齢だけで男の娘になれるかどうかが決まるわけではありません。若さだけでは会話が持ちません。
| 年齢への考え方 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 若ければ通る | 声で崩れる |
| もう遅いと諦める | 改善点を見ない |
| 年齢を隠す | 不自然になる |
| 年齢に合う可愛さを作る | 続けやすい |
結論から言えば、年齢は関係ありません。人生が続く限り、なりたい理想の自分への憧れは消えないからです。声の違和感が無くなれば、自然と自分も付いてきます。年齢をごまかすより、年齢に合う可愛さを作る方が現実的です。年齢で迷っている人は男の娘になりたいのに年齢が気になる人へ、期限を決められない理由は男の娘に年齢は関係する?で書いています。
よくある質問
男の娘の反対は何ですか
言葉の上で対になるのは「女装」です。女装と男の娘は違います。メイクリの定義する男の娘は、容姿と声のバランスに違和感が無い状態で、服装を表す言葉である女装とは見られる場所が異なります。なお、女性が男性的な見た目や声で見られる場合は「男装」と呼ばれ、男の娘とは別の言葉です。
声を変えないと男の娘ではないのですか
声を条件にしない使い方もあります。写真や動画を楽しむなら、声を条件へ入れなくて構いません。ただし通話や配信や対面のように会話がある場面で男の娘として見られたいなら、声と話し方から逃げることはできません。この記事はその立場で書いています。言葉の使い分けは男の娘と女装の違いを参照してください。
ボイチェンだけで男の娘になれますか
なれません。ボイスチェンジャーは声の高さや質感を変えられますが、元の話し方までは変えてくれません。語尾が強いままなら強く聞こえ、相づちや笑い方の癖も残ります。道具を通しても、中身の話し方が荒いままなら違和感は残ります。
| ボイチェンで変わるもの | 残るもの |
|---|---|
| 音の高さ | 話し方 |
| 声質 | 語尾 |
| 機械的な補正 | 相づち |
| 印象の一部 | 距離感 |
何歳まで目指せますか
年齢は関係ありません。人生が続く限り、なりたい理想の自分への憧れは消えないからです。声の違和感が無くなれば、自然と自分も付いてきます。
どのくらいかかりますか
土台だけで最低2年、長ければ5年以上かかります。日常生活で崩れないレベルの女声を取得するのは、はっきり言って地獄です。動画で紹介されているような一言だけの女声なら半年程度で可能ですが、この記事で言う「おはよう」が自然に女性として認識される状態は、それとは別のものです。
男の娘にはなれますか
容姿や年齢だけでは決まりません。決めるのは、見た目と声と話し方が同じ方向を向いているかです。詳しくは男の娘にはなれるのかで書いています。
独学でできますか
始めることはできます。服を選ぶ、写真を撮る、声を録音する、話し方を見直す。ここまでは自分でできます。ただし自分の声は自分では甘く聞きがちで、話し方の癖も本人には普通に感じます。特に声と話し方は、誰かに聞かれた時の印象を見ないとズレます。VRChatの男の娘に女声は必要か|アバターが可愛いほど、声も求められますに、講師と講座で確認したい条件をまとめています。周囲に言えないまま始めたい人は男の娘になりたいことを周囲に言えない人へを読んでください。
次に読む
- 女声の出し方|高さではなく、男性特有の響きを先に外します
- 可愛い声の出し方|高い声を作らなくても可愛く届く練習の順番
- ボイチェンはバレるのか|拍手を一回頼まれた時点で分かります
- 男の娘と女装の違い
- 女声の練習は危険?|喉が痛いなら、出し方が間違っています
男の娘の声を、現役声優とのマンツーマンで学びたい方は、女声・男の娘の専門スクール AIMAIをご覧ください。
