オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 男の娘として活動したい人から「息の量をどう調整すればいいか分からない」という相談を受けることがあります。
息を多く出すと女の子っぽくなる気がする。 溜息のような声を意識すると女性的に聞こえる。 でも笑ったときや長く話したときに崩れてしまう。
こうした状態で練習を続けている人がいます。
息の量は女声の成立に大きく関わる要素のひとつです。 ですが「息を多く出す」という方向が、 女声の成立とは別の方向に向かっているケースがあります。
このページでは、 男の娘が息の量を調整できないまま練習している理由と、 その背景にある構造を見ていきます。
溜息ボイスは女声として成立した状態ではない
息の調整で最初に把握しておくべきことは、 溜息のような声は女声として成立した状態ではないという点です。
息を多く含んだ溜息ボイスは、 一時的に女性的に聞こえやすくなることがあります。
声質が柔らかくなる。 高さが出やすくなる。 女の子っぽい雰囲気が生まれる。
こうした感触から「息を多く出すと女声に近づく」という判断で練習が進んでいくことがあります。
ですが溜息ボイスには、 女性特有のキーンとした芯がありません。
この芯がない状態では、 笑い声や返事などの反射的な発声の瞬間に崩れてしまいます。 長く話すうちに声が戻っていきます。
溜息ボイスの方向で練習を積み重ねても、 崩れにくい女声には近づきません。
息を多く出す方向が成立の持続性を下げる
息を多く出す方向で練習を続けることが、 女声の持続性を下げる要因になることがあります。
息を多く含んだ発声は、 声の芯が弱い状態です。
芯が弱いと、 声量を必要とする場面で崩れやすくなります。 感情が動いたときに崩れやすくなります。 長時間話し続けると息が続かなくなります。
男の娘として活動する場面では、 笑い声、驚きの声、長い会話、複数人でのやり取りなど、 声量や感情の変化を伴う場面が必ず出てきます。
息を多く出す方向で成立させた女声は、 こうした場面で崩れやすい構造を持っています。
息の多さが女声らしさの感触を生んでいる場合、 その感触が成立の確認基準として機能しないことがあります。
正しい順序は芯を出してから息を乗せる
息の調整において把握しておくべきことは、 女声を成立させる順序があるという点です。
まず息をカットして、 女性特有のキーンとした芯を出せる状態を作る。 その芯の上に、息を乗せていく。
この順序で進むことで、 芯と息のバランスが整った状態に近づきます。
逆の方向、つまり息を先に出す方向で進むと、 芯がない状態に息だけが乗った発声になります。
芯がない状態でいくら息を調整しても、 崩れにくい女声には近づきません。
「溜息ボイスから始める」という方向は、 この順序と逆になっています。
順序が逆のまま練習を積み重ねることが、 息の量を調整できない状態を長引かせる要因になります。
ノイズをカットできないと息の調整が機能しない
息の量の調整が機能するためには、 前提として男性特有のノイズをカットできる状態が必要です。
男性の声には、 女声の成立を妨げる特有のノイズが含まれています。
このノイズが残ったまま息の量を調整しても、 どれだけ息を増やしても減らしても、 聴き手には男性の声として知覚され続けます。
ノイズをカットできると、 低い声を出しても女性の低い声として聞こえるようになります。 逆にノイズが残ったままでは、 高い声を出しても男性に聞こえてしまいます。
息の量の調整は、 ノイズカットができた上で初めて意味を持つ要素です。
ノイズカットができていない状態で息の量を調整しようとしても、 方向が定まらないまま時間が過ぎることになります。
息の感触が正しい方向の確認基準にならない
息の調整を妨げる理由のひとつは、 息の感触が正しい方向の確認基準として機能しないという点です。
「息を多く出すと女声っぽくなる感触がある」 「この息の量の方が女性的に聞こえる気がする」
こうした感触を頼りに息の量を調整すると、 溜息ボイスの方向に向かいやすくなります。
感触として「良い感じがする」ことと、 女声として成立している状態は別の話です。
感触を基準にしている限り、 芯のない溜息ボイスの方向への積み重ねが「正しい方向」として評価され続けます。
感触ではなく、 崩れにくいかどうかという観点で確認することが必要です。
崩れにくいかどうかを自分で確認するためには、 笑い声や返事などの反射的な発声の場面でも維持できるかどうかを見ることが判断材料になります。
息の調整は成立の後半の話
ここまで見てきた内容に共通しているのは、 息の量の調整が女声の成立における後半の話であるという点です。
溜息ボイスは女声として成立した状態ではない。 息を多く出す方向が持続性を下げる。 正しい順序は芯を出してから息を乗せる。 ノイズカットができていないと息の調整が機能しない。 息の感触は正しい方向の確認基準にならない。
息の量を調整しようとする前に、 ノイズカットができているかどうか、 女性特有の芯が出せているかどうかを確認することが先になります。
この前提が整っていない状態で息の量だけを調整しようとしても、 方向が定まらないまま時間が過ぎることになります。
男の娘として活動する上で女声に何が必要になるのかについては、 男の娘になりたい人が「女声」を学べるスクールで扱っています。


