声優学校の案内に「一コマ120分」と書かれていれば、二時間たっぷり声を見てもらえるように感じます。ところが多人数の授業では、その120分を受講生全員で使います。
十人が同じ教室にいるなら、単純に割った時点で一人あたりは12分です。そこから全体説明や準備や片づけが入れば、自分の声へ直接使われる時間はさらに短くなります。
120分 ÷ 10人 = 12分
ただし「声優学校では誰でも必ず12分しか学べない」という意味ではありません。人数も授業内容も学校ごとに違うため、12分は一つの例です。
見るべきなのは一コマの長さではなく、自分が声を出して講師から言葉を受けた時間です。長い授業時間をそのまま個人指導の時間だと思うと、パンフレットの数字だけが立派なまま中身が薄切りになります。
一コマ120分はあなた専用の120分ではありません
多人数の授業で表示される一コマの時間は、教室全体が使う時間です。受講生一人が講師を占有できる時間ではありません。
一コマ120分で十人が順番に原稿を読む授業を考えてください。全員へ完全に同じ時間を渡したとしても、一人へ使える上限は12分です。
120分 ÷ 10人 = 一人あたり12分
この12分には原稿を読む時間と講評を聞く時間が含まれます。講評後に同じ箇所を試し直すなら、その時間も12分の中へ入ります。
現実の授業では全員へ均等に時間が配られるとは限りません。上手くいかず何度も止められる人や、講師と長く話す人もいます。機材の不調があれば予定も崩れます。
そのため単純な割り算で出る数字は「均等に配れた場合の上限」に近いものです。実際の自分の時間は、授業を見て別に測る必要があります。
「12分」は全校共通の事実ではなく計算例です
旧記事のように「多人数授業は一コマ12分しか学べない」と言い切ると、学校による違いを消してしまいます。六人の授業と二十人の授業を同じ数字で扱うことはできません。
授業時間と人数を変えるだけでも、一人あたりの数字は次のように変わります。
| 一コマの時間 | 受講生数 | 均等に割った時間 |
|---|---|---|
| 90分 | 6人 | 15分 |
| 120分 | 10人 | 12分 |
| 120分 | 15人 | 8分 |
| 120分 | 20人 | 6分 |
| 180分 | 30人 | 6分 |
数字を見ると「長時間授業なら安心」とは限らないことが分かります。180分あっても三十人で使えば、均等配分は一人6分です。
反対に90分でも六人なら、一人15分まで使えます。授業時間だけを比べるより、人数と組み合わせて見る方が実態へ近づきます。
計算式は難しくありません。
一コマの時間 ÷ 実際の参加人数 = 均等に割った一人分の時間
まずはこの数字を出してください。ここが一コマを評価する最初のセーブポイントです。
全体説明と準備を引かなければ数字は甘くなります
授業の開始から終了まで、全員が順番に原稿を読んでいるわけではありません。出欠確認や台本の説明や機材の準備にも時間を使います。
全員へ必要な時間には次のようなものがあります。
- 当日の課題説明
- 台本の配布と役決め
- 発声や全体練習
- 機材の準備と交代
- 休憩
- 連絡事項
- 片づけ
これらは授業を行うために必要です。ただしあなた一人の声を聞く時間ではありません。
一コマ120分で全体へ使う時間が20分あり、受講生が十人いる場合を計算します。
120分 − 20分 = 100分
100分 ÷ 10人 = 一人あたり10分
案内には120分と書かれていても、均等に使える個人枠は10分です。実際には役の長さや講評量が違うため、10分より短い人も出ます。
この差は小さく見えますが、講評後に再び試せるかを左右します。二分あれば短い台詞をもう一度読めるためです。
数えるべき時間は一種類ではありません
「自分の番が何分あったか」だけでは授業の密度を判定できません。自分の番の中にも複数の時間が混ざっています。
少なくとも次の三つへ分けてください。
| 時間の種類 | 中身 |
|---|---|
| 実演時間 | 自分が声を出した時間 |
| 個人講評時間 | 自分の音へ言葉を受けた時間 |
| 再実演時間 | 指摘後にもう一度試した時間 |
声を三分出して講師の話を七分聞けば、自分の番は十分です。けれど指摘後に一度も試せなければ、再実演時間はゼロです。
反対に短い台詞を何度も読み直せる授業なら、合計時間が短くても密度は上がります。技能は説明の長さだけではなく、試した回数からも育つからです。
自分の番の長さより、指摘後に何回やり直せたかを数えてください。
十数分の講義を受けても声を出さなければ、知識を得た時間です。声を直す訓練とは別に判定する必要があります。
他人を見ている時間は個人指導へ足せません
多人数授業には他人の実演を見られる利点があります。自分とは違う読み方を知り、講師の指摘を多く聞けます。
その時間を無価値と決める必要はありません。ただし自分が直接教わった時間へ足すのは誤りです。
たとえば120分の授業へ参加し、自分の番が10分だったとします。残りの110分は授業へ在室した時間ですが、あなたの声へ個別に返った時間ではありません。
この110分には見学や全体説明や待機が含まれます。得られるものはあっても、自分の癖を講師が確かめた時間とは役目が違います。
次の二つは別に記録してください。
- 在室時間:教室にいた合計時間です。
- 直接対応時間:自分の声と質問へ講師が対応した時間です。
学校の案内では在室時間が大きく見えます。あなたが確認すべきなのは、その中で直接対応時間がどれだけあるかです。
大きな宝箱を開けたら中に小さな薬草が一つだけ入っていた。そんなゲームなら笑えますが、学費を払った授業で同じ演出を受けると笑いにくくなります。
講義型の授業は人数で均等に割らない場合があります
全ての授業を人数で割ればよいわけではありません。講義型の授業では全員が同じ説明を聞くため、授業時間そのものを共有できます。
業界の知識や台本の読み方を学ぶ講義なら、120分を十人で割って12分とする必要はありません。全員が120分の説明を聞けるからです。
ただし講義型の授業でも、自分の声へ言葉が返る時間は別です。知識を受け取る時間と実演を手直しする時間を混ぜないでください。
授業の種類によって数え方を変えます。
| 授業の種類 | 主に見る数字 |
|---|---|
| 講義 | 内容と質問時間 |
| 順番制の実演 | 一人の実演と個人講評 |
| ペア練習 | 自分が声を出す時間と講師確認 |
| 全員での発声 | 個人の癖を見てもらう時間 |
| 作品制作 | 個人講評と収録回数 |
「一コマ120分」という同じ表示でも、受け取るものは授業形式で変わります。時間数だけではなく、その時間に何をするかを確認してください。
ペア練習の時間を講師の指導時間へ変えてはいけません
人数が多い授業では、生徒同士でペアを組んで練習することがあります。待機を減らし、声を出す回数を増やせる利点があります。
しかしペア練習の全時間を個人指導として数えることはできません。講師がそのペアを聞いていない間は、生徒同士で試している時間だからです。
一コマ120分のうち四十分をペア練習へ使った場合、声を出す時間は増えます。ただし講師が自分のペアへ来た時間が五分なら、講師の直接対応は五分です。
次の数字を分けてください。
- 自分が声を出した時間
- 相手の声を聞いた時間
- 講師が自分のペアを聞いた時間
- 講師から個人へ言葉が返った時間
- 指摘後に講師へ聞き直してもらった時間
ペア練習は反復へ使えます。正しい方向へ反復しているかの確認は、講師の耳が入らなければ分かりません。
配役の長さで一人分の時間は簡単に崩れます
アフレコや会話劇の授業では、全員が同じ量を話すとは限りません。主役と短い役では台詞の数が違います。
均等に割った時間が12分でも、役の量で実演時間は変わります。長い役を担当した人へ講評が集中すれば、短い役の人は数分で終わることがあります。
この差が一度だけなら授業の都合として受け入れられます。毎回同じ人へ長い役が集まるなら、学費に対して受ける実演量へ差が出ます。
学校へ確認する時は「一クラス何人ですか」だけでは足りません。
- 配役はどのように決まるか
- 一人の台詞量をそろえるか
- 短い役にも個人講評があるか
- 別の授業で役を交代するか
- 録音後に全員へ聞き直しがあるか
役が小さくても学べることはあります。ただし「作品へ参加した」ことと「自分の音を長く見てもらった」ことは別です。
休憩を含む授業時間か確認してください
案内に記載された授業時間へ休憩が含まれていることがあります。長い授業ほど途中で休憩が必要になるためです。
一コマ180分と書かれていても、十五分の休憩が二回あれば実際の授業は150分です。そこから準備時間を引き、人数で割ります。
例として三十人の授業を考えます。
180分 − 30分の休憩 = 150分
150分 ÷ 30人 = 一人あたり5分
これは全員へ均等に使った場合の数字です。全体説明が入れば、個人へ使える時間はもっと短くなります。
「三時間授業」という表示は強く見えます。しかし人数と休憩を入れた瞬間に、一人分が五分へ縮む例も作れます。
長さの看板に圧倒されず、実際に動く分数へ戻してください。
マイクの前へ立った時間だけでも足りません
声優の訓練ではマイク前の経験が重視されます。確かに機材との距離や交代の動きは、実際に立たなければ学びにくいものです。
ただしマイク前へ立った時間が全て濃い指導とは限りません。順番を待って立っている時間や、他人の台詞を受けている時間も含まれるからです。
マイク前の時間は次のように分けられます。
| マイク前で行うこと | 個人訓練としての役目 |
|---|---|
| 自分の台詞を読む | 実演 |
| 相手の台詞を待つ | 共演の待機 |
| 講師の説明を聞く | 知識の受領 |
| 指摘後に読み直す | 手直しの確認 |
| 機材の調整を待つ | 授業運営の待機 |
学校が「マイクを使う授業」と案内していても、自分が台詞を出した回数と再実演回数を確認してください。
機材の前へ立っただけで技術が上がるなら、マイクスタンドが一番の優等生です。人間側には声を出して比べる回数が要ります。
12分あれば十分な授業もあります
一人12分という数字だけで、その授業を無価値と決めることもできません。課題を一つへ絞り、短い台詞を何度も試せるなら12分でも変化は起きます。
たとえば語尾の癖だけを見る授業なら、最初の実演と講評と再実演を短い時間で回せます。本人が自宅で練習しており、講師へ聞きたい点も決まっていれば密度は上がります。
反対に一人30分あっても、講師の昔話を聞いて終われば自分の音は変わりません。時間の長さだけで良い授業とは決まりません。
12分を判定する時は次の内容を見ます。
- 課題が一つへ絞られているか
- 最初の音を講師が聞いたか
- 原因を具体的に示されたか
- 指摘後に再び試せたか
- 良い音を確認できたか
- 自宅課題が明確か
六つがそろうなら短い時間でも学びは残ります。最初の実演と感想だけで終わるなら、12分は名札を付けた順番待ちです。
体験授業の人数を通常授業へ当てはめないでください
体験授業では参加人数が通常時と違うことがあります。説明担当者が複数入り、質問へ時間を使える場合もあります。
体験の日に一人15分見てもらえたとしても、入学後も同じとは限りません。通常授業の人数と進み方を別に確認してください。
聞く内容は次の通りです。
- 通常授業の最大人数
- 最近の平均参加人数
- 一コマの実演人数
- 全体説明に使う目安時間
- 一人が読む平均回数
- 講評後に再実演できるか
- 欠席者がいる日の扱い
体験で得た満足を通常授業の分数へ置き換えないことです。特別な一日より毎週の通常運転が二年間を作ります。
入学前は最大人数で計算してください
学校へ人数を聞くと「少人数制です」や「クラスによって違います」と返ることがあります。言葉だけでは計算できません。
平均人数だけを聞くと、人数が多い日の負担を見落とします。入学前には最大人数でも計算してください。
たとえば平均八人で最大十二人の120分授業なら、数字は次のように変わります。
120分 ÷ 8人 = 15分
120分 ÷ 12人 = 10分
最大人数の日には一人分が五分減ります。全体説明を引けば差はさらに効きます。
少人数という名称に共通の基準はありません。学校側が少人数と呼んでいても、あなたが求める密度とは合わないことがあります。
名称ではなく最大人数と再実演の回数を聞いてください。
在学中は一コマだけ実測すれば見え方が変わります
すでに学校へ通っている人は、一度だけ授業の時間を記録してください。学校や講師を攻撃するためではなく、自分が何を受け取っているかを確かめるためです。
無断録音が禁止されている場所では録音しないでください。時計を見て大まかな時刻をメモするだけで足ります。
次の表へ記録します。
| 記録項目 | 実際の時間 |
|---|---|
| 授業全体 | 120分 |
| 全体説明と準備 | 20分 |
| 自分の実演 | 3分 |
| 自分への講評 | 5分 |
| 指摘後の再実演 | 2分 |
| 自分への合計 | 10分 |
この例では一コマ120分のうち、自分へ直接返った時間は10分です。その中で声を出したのは五分になります。
一回だけで学校全体を決める必要はありません。授業内容による差があるため、別の課題でも記録すると見えやすくなります。
一人分の時間が短い時は質問を小さくしてください
多人数授業へ在籍しており、すぐ環境を変えられない人もいます。その場合は短い順番を無駄にしない準備が必要です。
授業前に質問を一つへ絞ってください。「演技を良くしたいです」では広すぎます。
次のように狭くします。
- 二行目の語尾が毎回落ちます
- 長い台詞の後半で息が減ります
- 指示後も速度を変えられません
- 会話文が説明のように聞こえます
- 母音が崩れる言葉を確認したいです
質問が狭いほど講師は原因へ入りやすくなります。再実演へ使う時間も残せます。
自宅で最初の録音を作り、自分が困る場所を決めてから授業へ行ってください。教室で初めて問題を探すと、見つけた時には順番が終わります。
ただし受講生側がここまで準備しなければ個人の時間を使えない学校なら、その負担も含めて選択を考える必要があります。
時間が均等でも成果は均等になりません
全員へ同じ12分を配れば公平に見えます。けれど本人が必要とする時間は同じではありません。
一度の指摘で変えられる人もいれば、原因を見つけるまで複数の試行が必要な人もいます。初心者ほど言葉を動作へ変えるのに時間がかかります。
均等配分は授業運営の公平さを作ります。技能習得の公平さまでは作りません。
| 同じ12分を受けた人 | 起こりうる結果 |
|---|---|
| 課題が明確な人 | 短時間で試し直せる |
| 自分で練習できる人 | 授業外で続きを進められる |
| 原因が不明な人 | 問題探しだけで終わる |
| 初心者 | 指示の理解で時間を使う |
| 複数の癖がある人 | 一つだけ扱い残りを持ち越す |
学校へ通えば全員が同じ速さで伸びるという期待は、この差を無視しています。
必要な時間が多い人へ追加の個人対応があるかを確認してください。なければ本人だけが自宅で続きを判断することになります。
学費を見る前に一回の往復数を見てください
授業の価値を金額で比べる記事は別にあります。この記事で見るのは、一コマの中で学習の往復が何回起きるかです。
一回の往復は次の組み合わせです。
実演 → 個人講評 → 再実演 → 確認
この一組が一度も完成しない授業では、指摘の正誤を本人が確かめられません。実演して講評を受けただけなら半分で終わっています。
一人へ十数分しかなくても一組が完成する授業はあります。一人へ長い時間があっても講義だけなら往復はありません。
入学前に「一人何分ですか」と聞くだけでなく「講評後に同じ箇所を読み直せますか」と聞いてください。
数字と進め方を一緒に見た時、授業の本当の密度が分かります。
一コマの長さではなく自分へ返る分数を確認してください
声優学校の多人数授業が必ず12分になるわけではありません。120分を十人で均等に使った時に、一人12分となるだけです。
実際の時間は受講生数と全体説明と休憩と役の量で変わります。だから「一コマ120分」という表示だけでは個人の訓練量を判定できません。
最初に授業時間から全員へ使う時間を引きます。残った時間を実際の参加人数で割り、自分の実演と個人講評と再実演を別に数えてください。
他人を見る時間や講義の時間にも価値はあります。ただしあなたの声へ直接返った時間と混ぜてはいけません。
12分が十分か不足かは、その中で何回試し直せたかで変わります。数字の短さだけで怒るのではなく、学習の往復が完成しているかを見てください。
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