声優学校へ二年間通うと聞けば、長い期間をかけて声を鍛えられるように感じます。週ごとの授業へ休まず参加すれば、相当な量の指導を受けたと思うのも自然です。
しかし在籍した期間と、自分の声を講師に聞いてもらった合計時間は同じではありません。教室にいた時間には全体説明や待機や他の生徒の実演が含まれるからです。
前の記事では一コマの授業を人数で割り、自分へ返る分数を計算しました。今回はその分数へ年間の実施回数を掛けて、在籍期間全体の直接指導時間を出します。
二年間という看板ではなく、自分の声へ講師の耳が向いた合計時間を数えてください。
旧記事では二年間の直接指導が約十九時間になると断定していました。しかし授業時間も人数も年間回数も学校ごとに違うため、十九時間を全員へ当てはめることはできません。
使うべきなのは決め打ちの数字ではなく、自分の学校へ実数を入れる計算式です。
在籍期間と直接指導時間は別の数字です
二年間在籍した人は「二年間学んだ」と説明できます。これは通った期間を示す言葉としては間違っていません。
ただし職業訓練の量を測るなら、その二年間の中で何時間自分の声を扱ってもらったかを見る必要があります。学校へ向かう移動時間や教室で順番を待った時間は、直接指導ではないからです。
時間を次の四つへ分けてください。
| 時間の種類 | 含まれるもの |
|---|---|
| 在籍期間 | 入学から卒業までの暦上の期間 |
| 出席時間 | 教室にいた授業時間 |
| 実演時間 | 自分が声を出した時間 |
| 直接指導時間 | 自分の音へ講評と確認が返った時間 |
二年間という数字は最初の行です。声の手直しへ使われた量を知りたいなら、最後の行まで降りる必要があります。
四つを混ぜると「二年間も学んだのに伸びないのは自分の才能がないからだ」と考えます。実際には個人へ返った時間が想像より少なかった可能性もあります。
合計時間は三つの数字で計算できます
在籍期間全体の直接指導時間は、難しい式を使わなくても出せます。必要なのは一回あたりの直接対応分数と月の実施回数と通った月数です。
一回あたりの直接対応分数 × 月の実施回数 × 通学月数 = 合計直接指導分数
最後に六十分で割れば時間へ変えられます。
合計直接指導分数 ÷ 60 = 合計直接指導時間
たとえば一回の授業で自分へ直接返る時間が十分だったとします。月四回で二十四か月通ったという仮定なら、次の計算になります。
10分 × 4回 × 24か月 = 960分
960分 ÷ 60 = 16時間
この例では二年間の在籍に対し、直接対応の合計は十六時間です。学校全体へ通用する答えではなく、三つの仮定を置いた試算です。
一回十五分なら結果は変わります。月の授業が三回の時期や休講があれば、それも計算へ入れます。
旧記事の十九時間は一つの仮定にすぎません
旧記事では一回十二分として、月四回を二十四か月続ける計算を行っていました。
12分 × 4回 × 24か月 = 1,152分
1,152分 ÷ 60 = 19.2時間
算数としては成立しています。ただし次の条件が全てそろった時だけ出る数字です。
- 毎回の直接対応が十二分ある
- 毎月四回の授業がある
- 二十四か月すべて同じ頻度で続く
- 休講や長期休暇を含めない
- 行事の授業も同じ密度で行われる
一つでも違えば合計は変わります。だから十九時間を声優学校全体の事実として使ってはいけません。
十九時間という数字へ驚く前に、自分の学校では何分と何回になるかを出してください。数字を批判の武器にするより、自分の支払いと訓練を判定する材料にする方が役立ちます。
年間授業回数は月四回を掛けるだけでは出ません
毎週一回の授業と説明されると、月四回として計算したくなります。しかし一年中同じ回数で実施されるとは限りません。
祝日や長期休暇や学校行事が入れば、通常授業の回数は減ります。発表準備へ置き換わる週や試験だけを行う週も考えられます。
年間回数を確認する時は、予定表から次を分けてください。
- 通常の実演授業
- 講義だけの授業
- 発表会の準備
- 校内試験
- 休講
- 長期休暇
- 補講
声を出す授業が年間四十回ある人と、講義や行事を含めて四十回と数える人では直接指導の合計が違います。
入学案内へ年間授業数が書かれていても、その全てで個人講評を受けるとは限りません。科目別の予定表へ戻し、自分の声を聞いてもらう授業だけを抜き出してください。
二年間の中には授業を受けない月もあります
入学から卒業までが二十四か月でも、二十四か月ずっと通常授業が行われるとは限りません。入学直後の案内や卒業前の行事へ時間が使われることもあります。
学校生活では休暇や試験期間も必要です。問題はそれらを二年間の濃い訓練時間へ含めて想像することです。
たとえば通常授業が行われる月を二十か月として、一回十分で月四回なら次の計算です。
10分 × 4回 × 20か月 = 800分
800分 ÷ 60 = 約13.3時間
二十四か月で計算した十六時間から約二時間四十分減ります。数か月の違いでも合計へ影響します。
学校の期間を数える時は、暦ではなく通常授業が動いた月を数えてください。
科目ごとに直接対応の濃さは変わります
発声の授業とアフレコの授業と業界講義では、個人へ返る時間が同じではありません。全員で声を出す科目もあれば、一人ずつ原稿を読む科目もあります。
すべてを同じ十二分として掛けると、実態から離れます。科目ごとに一回の直接対応分数と年間回数を出してください。
| 科目 | 一回の直接対応 | 年間回数 | 年間合計 |
|---|---|---|---|
| 発声 | 5分 | 20回 | 100分 |
| ナレーション | 10分 | 15回 | 150分 |
| アフレコ | 6分 | 15回 | 90分 |
| 業界講義 | 0分 | 10回 | 0分 |
この仮定では年間の直接対応は三百四十分です。時間へ直すと約五時間四十分になります。
講義の価値がゼロという意味ではありません。自分の音への直接対応を集計しているため、個人講評がなければゼロと置くだけです。
科目の価値と直接対応の量を同じ数字で決めないでください。知識を受け取る科目と声を直す科目には違う役目があります。
実演時間と直接指導時間も分けてください
自分がマイクの前で十分話したとしても、講師がその全てを細かく見ているとは限りません。作品の進行を優先し、止めずに最後まで読む授業もあります。
逆に実演が三分でも、短い箇所を止めながら何度も聞き直してもらえる授業はあります。
次の二つを別に集計してください。
実演合計 = 自分が声を出した分数の合計
直接指導合計 = 自分の音へ講評と確認が返った分数の合計
実演合計は声を出した量を示します。直接指導合計は他者の耳で手直しを受けた量を示します。
自主練でも実演時間は増やせます。学校へ高い費用を払う価値を考えるなら、直接指導合計の方を別に見る必要があります。
再実演がない時間は半分の学習で終わります
講師から五分の講評を受けても、直した音を聞き直してもらえない授業があります。この五分を直接指導へ含めることはできますが、学習の往復は完成していません。
そこで直接指導時間を二つへ分ける方法があります。
| 指導の段階 | 数える内容 |
|---|---|
| 講評時間 | 最初の音へ言葉を受けた時間 |
| 確認時間 | 直した音を聞き直してもらった時間 |
一回の授業で講評が五分あり、確認がゼロなら直接対応は五分です。ただし技能が正しく変わったかは未確認です。
二年間の合計を出す時は確認時間も集めてください。講評が二十時間あっても確認が一時間なら、多くの指摘が自宅へ投げ返されたままです。
聞いた時間の総量より、直した音を確認された総量の方が技能へ近い数字です。
説明を受けた量だけで安心せず、二回目を聞かれた時間を数えてください。
発表会と作品制作は別の欄へ置きます
発表会や卒業制作では、通常授業より長く声を出すことがあります。稽古や収録へ多くの時間を使うため、合計へ入れたくなるでしょう。
ただし作品を完成させる時間と個人の欠点を直す時間は同じではありません。進行を止められず、できる範囲で役を完成させることもあります。
発表関連は次の三つへ分けてください。
- 稽古へ参加した時間
- 自分が実演した時間
- 個人の音へ手直しを受けた時間
稽古が三十時間あっても、個人講評が合計一時間なら直接指導へ入れるのは一時間です。
作品制作の経験には別の価値があります。共同作業や締切への対応を学べます。その価値を否定せず、声の手直し時間とは分けて保存してください。
欠席と休講は予定表ではなく実績から引きます
入学前の試算では予定された授業回数を使います。在学中や卒業後に計算するなら、実際に受けた回数へ置き換えてください。
体調不良や仕事で欠席した授業は、自分の直接指導へ入りません。学校側の都合で休講となり、補講が行われなかった回も同じです。
次の式へ変えます。
実施予定回数 − 欠席回数 − 未補講の休講回数 = 実際に受けた回数
補講を受けたなら戻して構いません。動画配信だけで個人講評がなければ、直接指導の回数へは足しません。
本人の欠席まで学校の責任にする話ではありません。支払った総額と実際に受け取ったものを比べるため、事実へ戻すだけです。
クラス人数が変われば月ごとの分数も変わります
入学時は少人数でも途中からクラスが合流することがあります。逆に退学者が出て人数が減ることもあります。
二年間ずっと同じ一人分の時間で計算すると、この変化を見落とします。学期ごとに人数が大きく違うなら分けてください。
たとえば前半が八人で後半が十二人だった場合を考えます。一コマから全体時間を引いた残りが九十六分なら、均等配分は次の通りです。
96分 ÷ 8人 = 12分
96分 ÷ 12人 = 8分
同じ科目でも一人分が四分減ります。年間回数が多ければ合計差も大きくなります。
学校へ人数を聞く時は入学時の予定だけでなく、クラス統合や最大人数も確認してください。
直接指導時間の長さだけで成長は決まりません
合計時間を出す目的は「長ければ必ず良い」と決めることではありません。講師の言葉が曖昧なら、長い時間を使っても癖が直らないことがあります。
短時間でも課題を一つへ絞り、指摘後に音が変われば密度は高くなります。自宅で同じ音を再現できれば、授業外の反復へつなげられます。
合計時間と一緒に次の内容も確認してください。
- 欠点の原因を示されたか
- 指摘後に試し直せたか
- 良い音と悪い音を比べられたか
- 自宅課題が具体的だったか
- 次回に再現を確認されたか
- 外部の音声でも変化が出たか
十時間の指導で三つの欠点が閉じた人もいれば、三十時間で同じ助言を聞き続ける人もいます。
時間は量を示します。何が変わったかは別の記録で判定してください。
合計時間を学費で割る前に料金の中身を分けます
直接指導の合計が出ると、学費をその時間で割りたくなります。時間単価は判断材料になりますが、学費の全額が個人指導だけの料金とは限りません。
学校の料金には校舎や設備や行事や学生生活も含まれます。進路相談や講義へ価値を感じる人もいます。
そのため次の二つを分けて考えてください。
- 学校生活全体へ払った総額
- 声の個人対応へ払ったとみなす総額
後者を正確に分けられない学校もあります。その時は学費総額を直接指導時間で割った数字を「学校全体の費用を個人対応だけで見た参考値」として扱います。
たとえば学費総額が二百万円で、直接指導が二十時間なら次の計算です。
2,000,000円 ÷ 20時間 = 1時間あたり100,000円
この数字だけで学校を暴利と断定することはできません。設備や行事や講義をすべて無価値としている計算だからです。
一方で本人が学校生活を求めず、声の手直しだけを目的に入ったなら重い参考値になります。何を買ったつもりだったかで読み方が変わります。
通学と準備へ使った時間も別に集計できます
直接指導が少なくても、学校へ通うためには多くの時間を使います。移動や待機や課題準備を含めれば生活への負担は増えます。
声の技能へ変わった量と、進路全体へ使った量を比べるため次の時間も集められます。
| 使った時間 | 例 |
|---|---|
| 移動時間 | 自宅と学校の往復 |
| 授業の在室時間 | 教室へいた時間 |
| 自主練時間 | 課題へ使った時間 |
| 行事時間 | 稽古や発表の準備 |
| 直接指導時間 | 個人へ講評が返った時間 |
総投入時間が千時間あっても、直接指導は二十時間という結果になることがあります。これは残りが全部無駄という意味ではありません。
自習や他人の実演から学んだこともあります。ただし講師が自分の音を直した時間は全体の一部だったと分かります。
この比率を知れば「学校へ行けば指導者がずっと見てくれる」という期待を現実へ戻せます。
自分用の集計表を一か月だけ作ってください
二年間すべての授業を思い出すのは難しいものです。在学中なら一か月だけ記録し、その結果から今後の見込みを出せます。
次の表を授業ごとに埋めてください。
| 日付 | 科目 | 在室時間 | 実演 | 講評 | 再確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 発声 | 120分 | 4分 | 5分 | 1分 |
| 2回目 | 台本 | 120分 | 5分 | 4分 | 0分 |
| 3回目 | アフレコ | 120分 | 3分 | 3分 | 1分 |
| 4回目 | 講義 | 120分 | 0分 | 0分 | 0分 |
この例では一か月の講評と再確認の合計は十四分です。実際の学校では違う数字になります。
一か月の結果へ通常授業が行われる月数を掛ければ、在籍期間の概算を作れます。学期によって科目や人数が変わるなら、学期ごとに作り直してください。
記録するだけで授業の価値が決まるわけではありません。数字を見た後に、自分の欠点が減っているかを音声で確認します。
卒業後でも過去の資料から概算できます
すでに卒業している人は、当時の時間を正確に覚えていないかもしれません。それでも時間割や予定表や保存した録音から概算できます。
次の資料を集めてください。
- 年間予定表
- 出席記録
- 授業の時間割
- 自分の録音日
- 発表会の台本
- 講師から受けた課題のメモ
一回の直接対応を思い出せない時は、幅を持たせて計算します。少ない想定と多い想定の二つを作る方法です。
たとえば一回五分から十分の間だったなら、両方で合計を出します。
5分 × 実施回数 = 少ない想定
10分 × 実施回数 = 多い想定
結果が十時間から二十時間なら、正確な一点は分からなくても範囲は見えます。
分からない数字を都合よく大きくせず、幅として残してください。
合計が少なかった時に全部を無駄と決めないでください
計算した結果が想像より少ないと、学校生活の全てを否定したくなります。しかし直接指導時間は価値の一部だけを測る数字です。
仲間との作品制作や人前で声を出した経験は別に残ります。自分で練習を続けた時間も技能へ影響しています。
そのうえで職業訓練として足りたかは厳しく見てください。個人の欠点を直す目的で高い費用を払ったのに、確認された時間が少なければ見直す理由になります。
次の三つへ分けると判断しやすくなります。
- 直接指導で得たもの
- 学校生活で得たもの
- 得られず今から補うもの
全部良かったと飾る必要も、全部無駄だったと捨てる必要もありません。買ったものの内訳を事実へ戻してください。
合計が長くても外部で変化がなければ安心できません
直接指導が多かった人も、それだけで仕事へ近づいたとは決まりません。学校内の指示へ対応できても、外部の原稿で同じ力を出せないことがあります。
合計時間を出した後は次の証拠と並べてください。
| 数えたもの | 確認する証拠 |
|---|---|
| 直接指導時間 | 録音前後の変化 |
| 再確認時間 | 別の原稿での再現 |
| 外部評価の回数 | 校外から受けた反応 |
| 在籍期間 | 卒業後に使える技能 |
時間が短くても大きな変化が出ているなら、密度が高かった可能性があります。時間が長くても同じ癖が残るなら、方法や指導との相性を見直す必要があります。
数字は才能判定ではありません。環境へ何を求め、何を受け取ったかを確認する道具です。
入学前は三つの想定で合計を出してください
これから学校を選ぶ人は一つの数字だけで判断しないでください。少人数の日と通常の日と最大人数の日で三つの想定を作ります。
たとえば一コマから全体時間を引いた残りが九十分で、参加人数が六人と十人と十五人なら次の通りです。
| 想定 | 人数 | 一人分の上限 |
|---|---|---|
| 少人数 | 6人 | 15分 |
| 通常 | 10人 | 9分 |
| 最大 | 15人 | 6分 |
この分数へ年間の通常実演回数を掛けます。年間三十回という仮定なら、合計は七時間半と四時間半と三時間になります。
これは直接対応の上限に近い試算です。講評後の再実演がなければ、技能確認の時間はさらに少なくなります。
最も良い条件だけで二年間を想像しないことです。通常と最大の数字も見れば、人数が増えた時の弱さが分かります。
学校へ聞くべき質問は年間の総授業時間ではありません
学校説明会では総授業時間を示されることがあります。数字が大きいほど充実して見えます。
しかし総授業時間だけでは、自分への直接対応を計算できません。次の質問へ変えてください。
- 実演授業は年間何回ありますか。
- 通常時と最大時の参加人数は何人ですか。
- 一人が一回で何度実演しますか。
- 個人講評は毎回ありますか。
- 講評後に再実演できますか。
- 前回の課題を次回も確認しますか。
- 行事へ置き換わる授業は何回ありますか。
回答を使えば、自分用の概算を作れます。
「総授業時間は豊富です」という言葉だけでは足りません。教室全体の時間から、あなたへ返る時間へ変換してください。
在籍年数ではなく直接指導の合計と成果を並べてください
声優学校で二年間学んだ実質時間は、全員が十九時間になるわけではありません。一回の直接対応と実施回数と通学月数で変わります。
計算は単純です。一回あたりの直接対応分数へ実際の回数を掛け、六十分で割ります。
ただし合計時間だけで学校の価値を決めないでください。講評後の再確認があったかや、録音の欠点が減ったかも一緒に見ます。
二年間という長さは安心を作ります。けれど暦の長さは、講師が自分の声を聞いた量を教えてくれません。
在籍年数を誇る前に、自分へ返った分数を合計してください。その数字と外部へ持ち出せる技能が釣り合っているかを確認してください。
声優専門学校へ通っても仕事へつながりにくい原因の全体像は声優専門学校へ通っても声優になれない理由|授業と現場の評価がつながらないページで詳しく解説しています。


