オンライン特化型の声優スクール「メイクリ」では 声優を目指している方から 「ボイトレで声を鍛えてから声優の勉強を始めようと思っています」という話を聞くことがあります。
ボイトレで発声を鍛えることが声優への近道になると考える人は少なくありません。 声優には声の技術が必要だからボイトレで基礎を固めるというロジックは 一見合理的に聞こえます。
ですがボイトレで積み上げたものが声優の仕事に直接対応しているかどうかは 別の問題です。
このページでは ボイトレで声優になれると思っている人に その認識のどこにズレがあるかを伝えます。
ボイトレと声優の評価基準は異なる
ボイトレで鍛えた声が声優の仕事に直接使えるかどうかを考えるためには まずそれぞれの評価基準を確認する必要があります。
ボイトレの評価基準は 音楽として成立するかどうかです。 音程・リズム・声量・表現力が問われます。 ライブやカラオケ、レコーディングで機能するかどうかが判断の基準になります。
声優の評価基準は マイクを通した音声として機能するかどうかです。 発声・滑舌・感情処理・間の取り方が収録環境でどう聴こえるかが問われます。 アフレコスタジオや収録ブースで機能するかどうかが判断の基準になります。
同じ「声を使う仕事」であっても 評価される場と評価される内容が根本的に異なります。
ボイトレで音楽的な観点から声を鍛えることは 声優の評価基準に直接対応していません。
ボイトレで積み上がる発声と収録に必要な発声の差
ボイトレスクールでの練習は 教室という広い空間で行われます。 声が壁に反響し広い空間に響かせる発声が練習の中心になります。
この環境で継続して練習すると 広い空間で遠くまで届かせる発声が積み上がります。
声優の収録はマイクを前にした状態で行われます。 マイクからの距離、息の量、声量のコントロール、力みによるノイズの有無が 毎回確認される環境です。
広い空間に届かせる発声と マイクに適切な音量と質で入る発声では 求められる調整の方向が異なります。
ボイトレで大きく豊かに声を出す練習を積み重ねた後に 収録環境でマイクに向かうと ボイトレで身についた出し方が収録として機能しない場面が出てきます。
ボイトレで鍛えた発声を収録環境向けに調整する工程が 別途必要になる可能性があります。
ボイトレで声優の基礎ができるという認識のズレ
「まずボイトレで発声の基礎を作ってから声優の練習に入る」 という段階的なプランを持っている人がいます。
この認識のズレは ボイトレの基礎と声優の基礎が同じものだという前提にあります。
ボイトレの基礎は 音楽として成立するための発声の土台です。 音程に合わせた声のコントロール、 歌として聴こえるための息の使い方が中心になります。
声優の基礎は 収録として成立するための発声の土台です。 マイクを通した音声として機能する声量とコントロール、 台本を読みながら感情を乗せる処理の方法が中心になります。
同じ「発声の基礎」という言葉でも ボイトレと声優では積み上げるものの方向が異なります。
ボイトレで基礎を作ってから声優レッスンに移行する場合 ボイトレで身についた発声の癖を声優向けに調整する工程が加わります。 最初から声優レッスンとして設計された環境で練習することと比較して 時間と費用のコストが余分にかかりやすい構造があります。
大手マンツーマンスクールのボイトレが声優指導として機能しない理由
シアーミュージック、ナユタス、MYUといった大手マンツーマンスクールで 声優を目指してボイトレを受けた場合の問題点があります。
これらのスクールでは声優講座・ボイトレ講座・ボーカル講座の入口が同じです。 声優を目指している人もボーカルを学びたい人も同じ枠のレッスンに入ります。
担当する講師は声優指導に特化しているとは限りません。 ボーカル講師がボイトレとして声優志望者を担当するケースがあります。
この場合フィードバックはボーカルやボイトレとしての観点から行われます。 収録環境を前提にした声優特有の課題への対応は期待しにくい状態になります。
また大手マンツーマンスクールのレッスンは通学型です。 教室という広い空間でのレッスンが基本になります。 マイクを前提にした収録環境での練習は 通学型の教室では日常的には行われません。
声優を目指してボイトレスクールに通うことで ボイトレとしての技術は積み上がります。 ですが声優の評価基準に照らして必要なものが積み上がっているかどうかは 別の確認が必要です。
ボイトレで時間と費用を使い続けることのリスク
声優を目指す人にとって時間と費用は有限のリソースです。
ボイトレスクールに月2回通う場合 シアーミュージックで月額11,000円 ナユタスで月額16,200円のコストがかかります。
声優レッスンとして機能していない環境に この費用を使い続けることは 声優として成立するために必要な技術の積み上げとは別のところに リソースが流れていく状態です。
ボイトレで数ヶ月通い続けた後に 声優レッスンとして設計された環境に移行する場合 ボイトレで身についた発声の癖を調整する工程が加わります。
声優を目指すと決めた時点で ボイトレを経由するプランが声優として成立するための最短距離かどうかを 確認する必要があります。
声優として成立するために必要なことを先に知る
ボイトレで声優になれるという認識のズレを解消するためには 声優として成立するために何が必要かを先に知ることが前提になります。
声優の評価基準はマイクを通した音声です。 収録環境で機能する発声・滑舌・感情処理・間の取り方が求められます。
この基準に照らして ボイトレで積み上がるものがどこまで対応しているかを確認することが スクール選びの判断材料になります。
ボイトレと声優レッスンの違いを知った上で 声優として成立するために必要な環境を選ぶことが 時間と費用のコストを最小化するための判断になります。
ボイトレで声優になれるという認識のズレと 声優レッスンとしてマンツーマンが成立するための条件については マンツーマンの声優レッスンが本当に機能する条件で扱っています。

