オンライン特化型の声優スクール『メイクリ』では、女声に関する相談を日常的に受けています。その中には、普段の活動では通じているのに、イベントや本番の場面になると声がうまく出なかったという経験をしている方がいます。
男の娘としてのVR活動では、アバターや衣装は整えられます。立ち振る舞いや世界観も、工夫すれば形になります。
ですが、最後に残るのは「声」です。話した瞬間に生まれる違和感は、誤魔化しがききません。
練習では出た。普段の活動でも通じていた。なのにイベント当日、声がいつもと違った。本番でだけ崩れた。
こうした経験は、努力不足の問題ではありません。本番環境が、普段の活動と異なる状態を作り出すためです。
本記事では、VRイベントの本番で声が変わる理由について、特定の方法や練習論に寄らず、環境と発声の関係という視点から掘り下げていきます。
本番環境は普段の活動と何が違うか
VRChatのイベントは、普段の活動といくつかの点で異なります。
参加者の数が増えます。知らない人が多くなります。「ちゃんとやらなければ」という意識が生まれます。失敗できないという感覚が出ます。
これらは心理的な状態の変化です。心理的な状態は身体に影響し、身体の状態は声に影響します。普段と同じ声を出そうとしても、環境が変われば身体の状態が変わっています。
観客の存在が発声に与える影響
普段の1対1の会話と、複数の人が見ている場面での発話は、声への意識の向き方が異なります。
観客がいる場面では、声を評価される意識が生まれます。「うまく出せているか」という自己監視が増えます。この自己監視が過剰になると、声の出方が不自然になります。
「上手くやろうとしたら逆にダメだった」という経験は、この自己監視が原因である場合があります。意識を向けすぎることで、普段の状態から外れます。
「練習では出た」の限界
練習環境は、多くの場合、本番環境より条件が整っています。一人で、あるいは慣れた相手と、評価されないという前提で練習します。
その条件が揃っているときに出る声は、その条件下での成立です。条件が変わる本番では、成立の保証にはなりません。
「練習では出た」という事実は、その条件下では成立したという情報です。本番で同じ声が出るかどうかは、練習での成功とは別の問いです。
本番で崩れた経験をどう扱うか
イベントの本番で声が崩れた経験は、声の現状に関する具体的な情報を含んでいます。
普段の活動では通じていても、本番では崩れた。これは、声が本番環境の条件に対応できていなかったことを示しています。その条件とは何か、緊張なのか、観客の存在なのか、場の雰囲気なのか。原因を特定することが、次の判断材料になります。
どうすれば本番でも崩れない声に至るか、という方法については、本記事では扱いません。ただ、本番と普段で声が変わる状態が続いているなら、声がまだ特定の条件下でしか成立していない段階にあります。
男の娘としての声の成立について、定義から確認したい方は、男の娘とは何か、成立のための判断基準をご覧ください。
「出せる瞬間がある」ではなく、「何度でも再現できる」まで行く。
本番でも、大勢の前でも、普段と変わらない声が出る。そこから初めて、男の娘は成立します。
「可愛い」に近道無し。


