オンライン特化型の声優スクール『メイクリ』では、女声に関する相談を日常的に受けています。その中には、仲のいい友人との会話では女声が通じるのに、知らない人に話しかける場面になると急に崩れるという経験をしている方がいます。
男の娘としてのVR活動では、アバターや衣装は整えられます。立ち振る舞いや世界観も、工夫すれば形になります。
ですが、最後に残るのは「声」です。話した瞬間に生まれる違和感は、誤魔化しがききません。
友人との会話は通じる。でも初対面の相手に話しかける瞬間、声が変わる。緊張する場面でだけ崩れる。
こうした違和感は、努力不足の問題ではありません。緊張という状態が、声の制御に影響するためです。
本記事では、知らない人に話しかける場面で声が崩れやすい理由について、特定の方法や練習論に寄らず、緊張と発声の関係という視点から掘り下げていきます。
緊張は身体の状態を変える
緊張すると、身体に変化が起きます。呼吸が浅くなります。筋肉が緊張します。心拍数が上がります。
これらの変化は、声にも影響します。呼吸が浅くなると、発声に使える息の量が変わります。声帯周囲の筋肉が緊張すると、声の出方が変わります。
意識的に作っていた女声は、身体の状態が変わった瞬間に、その制御が乱れやすくなります。緊張によって身体の状態が変わり、声への影響が出る。これは生理的に起きることです。
知らない人への発話は特殊な状況である
友人との会話は、相手の反応が予測できる状況です。どう反応するか、どんな会話になるかが、ある程度見えています。
知らない人に話しかける場面は、相手の反応が読めません。声をどう評価されるか分からない。どう反応されるか分からない。この不確実性が緊張を生みます。
また、初対面の相手に話しかける最初の一言は、「声を判断される」という意識が生じやすい場面です。その意識が声への過剰な注意を生み、かえって制御が乱れる場合があります。
「意識しすぎ」が崩れを引き起こす場合がある
声に意識を向けすぎることで、かえってうまく出せなくなる場合があります。
普段の友人との会話では、声より会話の内容に意識が向いています。声は半ば自動的に出ています。知らない人への発話では、声を意識する比重が増えます。「ちゃんと女声で話さないと」という意識が強くなるほど、声の出方が不自然になります。
これは声の技術の問題ではなく、意識の向け方の問題です。ただし、意識の向け方をコントロールすることは、言葉で言うほど簡単ではありません。
緊張する場面で崩れる声は定着していない
友人との会話で通じる声が、緊張する場面で崩れるとすれば、その声はまだ定着していない段階にあります。
定着した声とは、身体の状態が変わっても出せる声です。緊張しても、驚いても、興奮しても出てくる声です。意識的に作っている段階では、身体の状態の変化に対応しきれない場合が生じます。
友人との会話での成功体験は、条件が整った状態での成功です。初対面の相手、緊張する場面、予測できない状況での成功とは、求められる状態が異なります。
緊張する場面でも崩れない声とはどういうことか
緊張する場面でも崩れない女声とは、身体の状態に左右されない段階に至った声です。
どうすればその状態に至るか、という方法については、本記事では扱いません。ただ、「友人とは通じるのに初対面では崩れる」という状態が続いているなら、声がまだ特定の条件下でしか成立しない段階にある可能性があります。
VRChatでの活動範囲が広がるほど、初対面の相手や緊張する場面は増えます。活動の幅と、声が成立できる条件の幅が合っているかを確認する必要があります。
男の娘としてどんな場面でも通じる女声を学ぶことについて知りたい方は、男の娘として認識されるための成立条件と判断基準をご覧ください。
「出せる瞬間がある」ではなく、「何度でも再現できる」まで行く。
初対面でも、緊張する場面でも、崩れない。そこから初めて、男の娘は成立します。
「可愛い」に近道無し。


