オンライン特化型の声優スクール「メイクリ」では 声優やボイトレのスクールを検討している方から 「体験レッスンの講師ってちゃんと給料もらえてるんですか」という質問を受けることがあります。
シアーミュージック、ナユタス、MYUをはじめとする大手マンツーマンスクールは 無料体験レッスンを集客の入口として設けています。 受ける側にとっては無料ですが その場で指導にあたる講師への報酬がどうなっているかは 受講者には見えない部分です。
このページでは 大手マンツーマンスクールの体験レッスンで講師に渡る報酬の実態と その構造が何を意味するのかを見ていきます。
大手マンツーマンスクールの講師は業務委託契約である
シアーミュージックをはじめとする大手マンツーマンスクールの講師は 雇用契約ではなく業務委託契約で働いています。
業務委託契約とは スクールと講師が雇用関係ではなく 個人事業主として契約を結ぶ形態です。
この契約形態では 講師はスクールの社員ではないため 固定給や社会保険といった保障がありません。 レッスンを担当した分だけ報酬が発生する仕組みです。
大手音楽スクールやボイトレスクールの多くがこの形態を採用しているのは 講師の人件費をレッスン数に応じて変動させられるためです。 スクール側にとってはリスクを抑えた運営が可能になります。
一方で講師側は レッスンが入らなければ収入がゼロになるという不安定な状況に置かれます。
通常レッスンで講師に渡る報酬
各スクールの通常レッスンにおける講師報酬を見ていきます。
シアーミュージックは1コマ45分あたり800円です。 ナユタスは1コマ50分あたり1,500円です。 MYUは1コマ60分あたり1,300円です。
レッスン時間と報酬の両方でシアーミュージックが最も低い水準にあります。
生徒側が支払う金額と照らし合わせると シアーミュージックの月2回コースでは1回あたり5,500円です。 講師報酬は800円なので差額は4,700円になります。
ナユタスは1回あたり8,100円で講師報酬が1,500円なので差額は6,600円です。 MYUは1回あたり6,600円で講師報酬が1,300円なので差額は5,300円です。
受講者が支払う金額の大部分はスクールの収益になります。 講師に渡る報酬は受講料のごく一部です。
体験レッスンは成功報酬型である
通常レッスンでも低水準の報酬ですが 体験レッスンの報酬構造はさらに異なります。
シアーミュージックの体験レッスンは成功報酬型です。 受講者が入会した場合にのみ報酬が発生する仕組みです。 入会に繋がらなければ講師への報酬はゼロです。
ナユタスは未入会でも1コマの半額が支払われる仕組みがあります。 シアーミュージックにはその仕組みがありません。
体験レッスンの入会率は10%を下回ります。 10回担当して9回は報酬が発生しない計算になります。 運よく入会に繋がっても報酬は2,000円程度です。
無料体験レッスンのコストは 実質的に講師側に転嫁されている構造です。
成功報酬型が講師の動機に与える影響
体験レッスンで入会に繋がらなければ報酬がゼロになる構造の中で 講師が体験レッスンに通常レッスンと同じ密度で臨む動機は 経済的な観点からは成立しにくくなります。
10回担当して報酬が発生するのは1回程度です。 入会に繋がっても報酬は2,000円程度です。
この状況では 体験レッスンに割く労力と得られる報酬が見合わないという判断が生まれやすくなります。 結果として体験レッスンの質は通常レッスンとは異なる状態になりやすいです。
これは講師個人の姿勢や意識の問題ではありません。 報酬構造がそうなっているための結果です。
体験レッスンで感じた講師の印象が 入会後のレッスンの質と一致しない可能性があるのは この報酬構造が背景にあります。
講師の定着率が低い理由
通常レッスンでも800円という報酬水準では 講師が長期的にスクールに在籍し続ける動機が弱くなります。
業務委託契約のため固定収入がなく レッスンが入らない時間帯は収入がゼロです。 複数のスクールを掛け持ちしながら収入を確保する講師も多く 特定のスクールへの帰属意識は薄くなりやすい状況です。
講師の定着率が低い環境では 入会時に担当した講師が数ヶ月後に在籍していないケースも起きます。
継続的に同じ講師に見てもらうことが 声優レッスンやボイトレの成長に直結するにもかかわらず 講師が変わり続ける環境に置かれる可能性があります。
入会時の体験レッスンで感じた印象と 実際の継続的なレッスン環境の間にズレが生まれる原因のひとつがここにあります。
声優・ボイトレ・ボーカルで同じ講師が担当する構造
大手マンツーマンスクールでは 声優講座・ボイトレ講座・ボーカル講座のすべての入口が同じ体験レッスンに集約されています。
体験レッスンを担当する講師は 声優を目指す人にもボーカルを学びたい人にも 同じ枠の中で対応します。
声優として成立するために必要な指導と ボーカルとして成立するために必要な指導は 重なる部分もありますが本質的に異なります。
声優の評価はマイクを通した音声であり 発声・滑舌・感情処理・間の取り方が収録環境で機能するかどうかです。
ボーカルの評価は音程・リズム・表現力であり ライブやレコーディングで機能するかどうかです。
どちらの目的で来た受講者に対しても 同じ30分の体験レッスンで対応するという構造は 声優を目指している人が声優レッスンとして必要な観点からフィードバックを受けられているかどうかを 保証しません。
体験レッスンの報酬構造が示すもの
ここまで見てきた内容を整理します。
講師報酬はシアーミュージックで800円という水準です。 体験レッスンは入会しなければゼロです。 入会率は10%未満です。
受講者が支払う金額の大部分はスクールの収益になります。 講師に渡る報酬は受講料のごく一部であり 体験レッスンに至ってはゼロになる可能性が高い状態です。
この構造の中で 体験レッスンが誰の利益に機能しているかは 数字を見れば判断できます。
受講者にとって必要なのは 体験レッスンという入口の印象ではなく 入会後のレッスンが成立する条件を満たしているかどうかです。
報酬構造を含めた大手マンツーマンスクールの体験レッスンが成立しない構造の全体像は 大手マンツーマンスクールの無料体験レッスンが成立しない構造にまとめています。

