オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「大きな声を出そうとすると喉が苦しくなる」という相談を受けることがあります。
喉声の状態で声を張ることは 喉への負担を一気に高める行為です。 何が起きるのかを構造として理解することで、 声量と発声の関係が見えてきます。
このページでは、 喉声のまま声を張ると何が起きるのかを見ていきます。
声を張るとは何か
声を張るとは、 通常より大きな声量で発声することです。
適切な発声で声量を上げるためには 横隔膜による息の圧力を高めつつ、 共鳴腔を十分に機能させることが必要です。 共鳴腔が機能していれば、 それほど大きな力を使わなくても 声は広がりをもって前に飛んでいきます。
喉声の状態では共鳴腔が機能していません。 この状態で声量を上げようとすると、 共鳴腔による増幅ができないため 喉が単独で声を大きくしようとします。 これが「声を張る」状態として現れます。
喉声で声を張ると声帯への圧力が急増する
喉声の状態で声を張ると、 声帯への圧力が急増します。
共鳴腔が機能しない状態で音量を上げるためには、 声帯をより強く振動させることが必要です。 声帯を強く振動させるためには 息の圧力を高める必要があります。
ところが息の圧力が高まると 声帯はその圧力に対抗してさらに強く閉じようとします。 この過剰な閉じ方が声帯への圧力を急増させます。
声帯への圧力が急増すると 振動が不均一になり、 声は大きくなるものの 響きが失われた状態になります。 さらに喉周辺の筋肉全体の緊張が高まり、 喉声がより顕著な状態になります。
声を張るほど喉の疲れが加速する
喉声の状態で声を張ると、 喉の疲れが通常より速く蓄積します。
通常の発声でも喉への負担が大きい喉声の状態で、 さらに声量を上げようとすることで 負担が一気に増します。
数分声を張り続けただけで喉が疲れる、 大きな声を出した後に喉が痛む、 声を張った翌日に声の調子が悪いといった状態は 喉声で声を張ったことによる 喉への急激な負担の蓄積が原因として考えられます。
舞台や発表会など声量が必要な場面の後に 毎回喉が消耗する経験がある人は この状態が起きているケースが多いです。
声を張るほど声が通らなくなる逆説
喉声の状態で声を張ると、 逆説的に声が通らなくなることがあります。
共鳴腔が機能しない状態で音量だけを上げても、 倍音が整っていない声は 遠くまで届く力を持ちません。 音量はあるが通らないという状態になります。
また喉への圧力が高まるほど 声帯の振動がさらに不均一になり、 倍音の乱れが増します。 倍音が乱れた声は 聴き手に刺さるような印象を与えるか、 または詰まって聞こえるかのどちらかになりやすく、 どちらも遠くまで通る声にはなりません。
「大きな声で話しているのに聞こえないと言われる」 という経験がある人は このパターンに陥っている可能性があります。
張り上げ発声の習慣化リスク
喉声の状態で声量が必要な場面を繰り返すと、 張り上げ発声が習慣化するリスクがあります。
張り上げ発声とは 共鳴腔を使わずに喉の力だけで声量を出す発声パターンです。 喉声がベースにある状態で声量を求められる場面が続くと、 この張り上げのパターンが発声習慣として強化されます。
張り上げ発声が習慣化すると 喉への負担が日常的に高い状態が続きます。 声帯への慢性的なダメージにつながり、 声のかすれや声質の変化として現れることがあります。
声量が必要な場面が多い職業や活動をしている人は、 喉声の状態を早期に見直すことが 声を長期間守るためにも必要です。
声を張る必要がない発声の条件
共鳴腔が機能した適切な発声では 特別に声を張らなくても声が届きます。
倍音が整った声は 音量が大きくなくても 遠くまで自然に届く特性があります。 力を入れずに声が前に飛んでいく状態が 共鳴腔が機能している発声の特徴です。
この状態では 大きな声量を求められる場面でも 喉への過剰な負担なく対応できます。
声を張る必要がない発声の条件は 喉声の状態を解消した先にあります。
共鳴腔が機能し声が届く発声の構造については、 声量を張らずに届く発声の成立条件で詳しく扱っています。

