オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「毎日練習しているのに声が変わらない、むしろ疲れやすくなった気がする」という相談を受けることがあります。
喉声の状態のまま練習を続けることには 明確なリスクがあります。 練習量が増えるほど状態が固定化・悪化する可能性があることを 理解しておく必要があります。
このページでは、 喉声のまま練習を続けると起きることを見ていきます。
練習量と改善は比例しない
発声の練習において 練習量を増やせば必ず改善するという前提は 正しくありません。
練習量と改善が比例するのは 練習の方向性が正しい場合に限られます。 方向性がずれた練習をいくら重ねても 目標とする状態には近づきません。
喉声の状態のまま練習を続けることは 喉声のパターンで発声することを繰り返すことです。 繰り返しによって身体が学習するのは 喉声のパターンです。 喉声の状態は改善されるのではなく さらに強固に定着していきます。
練習量が多いほど 喉声が深く定着するというリスクがあります。
喉声パターンの強化と固定化
発声の習慣は繰り返しによって強化されます。
喉声の状態で毎日発声練習をすると、 脳と身体は「これが発声の正しいパターンだ」として 喉声の動作を強化します。
神経系の学習という観点では、 繰り返しが多いほど そのパターンが自動化されます。 喉声のパターンが自動化されるほど 意識的に変えようとしても 変わりにくい状態になっていきます。
早い段階で気づいて対処するほど 固定化の程度が低いため変えやすく、 気づかないまま練習を重ねるほど 固定化が深まり変えるために必要な取り組みが増えます。
喉への慢性的な負担の蓄積
喉声のまま練習を続けると、 喉への慢性的な負担が蓄積されます。
一度の練習での喉への負担は 小さく感じられることがあります。 ですが毎日の練習を通じて積み重なっていくと、 喉周辺の筋肉が常に緊張した状態に置かれます。
慢性的な緊張状態は 声帯や喉周辺の筋肉に継続的なダメージを与えます。 声がかすれやすくなる、 喉の違和感が慢性化する、 高音が出にくくなるといった状態が 練習を続けるほど進行するケースがあります。
「練習しているのに声の状態が悪化している」という 経験がある人は、 喉声のまま練習を重ねていることが 原因である可能性があります。
声帯への器質的なリスク
喉声のまま長期間練習を続けると、 声帯に器質的な問題が起きるリスクがあります。
声帯結節は声帯の過剰な摩擦によって 粘膜が硬くなる状態です。 声帯ポリープは声帯への過剰な負荷によって 粘膜が膨らむ状態です。
これらは声帯への慢性的な過負荷によって 形成されやすくなります。 喉声の状態での継続的な発声練習は この過負荷を日常的に生み出します。
声優を目指している場合、 声帯に器質的な問題が起きると レッスンや収録への影響が大きくなります。 回復に時間がかかるだけでなく、 状態によっては発声そのものが制限されることがあります。
間違った発声感覚の定着
喉声のまま練習を続けると、 間違った発声感覚が定着するリスクがあります。
喉声の感覚を「これが正しい発声の感覚だ」として 身体が記憶することで、 後から正しい発声に修正しようとしたときに 正しい状態の感覚が分からなくなります。
「力が入っているのが普通」 「喉を使うのが普通」という感覚が定着すると、 喉声でない発声をしたときに 「何か変な感じがする」として 正しい状態を不正解として認識してしまうことがあります。
この感覚の定着は 喉声の改善に取り組む際の大きな障壁になります。 練習量が多いほど定着が深まります。
練習を止めることが必要な場合もある
喉声のまま練習を続けていると気づいた場合、 いったん練習を止めることが 改善の第一歩になることがあります。
練習を止めることは後退ではありません。 方向性がずれたまま練習を続けることのほうが 状態の悪化につながるリスクがあります。
発声の構造として喉声の原因を理解し、 外部からの確認を通じて方向性を確認した上で 練習を再開することが必要です。
喉声の状態を変えた上で成立する発声の条件については、 喉声を解消してから始める発声練習の構造で詳しく扱っています。

