オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「何十年も声について何も言われなかった」という人から 喉声の相談を受けることがあります。
喉声が長年気づかれないまま続くことは 珍しいことではありません。 その背景には複数の構造的な理由があります。
このページでは、 喉声が長年気づかれない理由を見ていきます。
日常生活では喉声が問題として顕在化しにくい
喉声が長年気づかれない最大の理由は、 日常生活では問題として顕在化しにくいことです。
日常会話は比較的短時間で、 近い距離での発話が中心です。 この条件では喉声の詰まりやこもりが 空間の反響や相手との距離によって補正されます。
声が多少通りにくくても 日常会話は成立します。 聞き取りにくさがあっても 相手が聞き返したり補完したりして コミュニケーションは続きます。
喉声の問題が顕在化するのは マイクを使う場面、大人数の前で話す場面、 長時間の発話が必要な場面など 日常会話とは異なる条件が重なったときです。 こうした場面に入る機会がなければ、 喉声は問題として浮上しません。
他者からの指摘が起きにくい環境がある
喉声が長年気づかれない理由のひとつに、 他者からの指摘が起きにくいという環境の問題があります。
日常生活において声の質について 直接指摘することは少ないです。 聞き取りにくい、通らない、こもっているといった 声の問題があっても、 相手がそれを直接伝えることはほとんどありません。
職場や学校の環境では 声の問題を指摘することは 相手を傷つける可能性があるとして 避けられることが多いです。
指摘が起きない環境では 喉声の状態は問題として認識されないまま続きます。 長年指摘がなかったということは 長年指摘が起きない環境にいたということでもあります。
喉の疲れへの慣れが気づきを妨げる
喉声の状態が続いていると、 喉の疲れに慣れていきます。
喉声では発声のたびに喉への負担が蓄積されます。 この疲れが日常的に続くと、 疲れている状態が基準として定着します。
「話した後に喉が疲れるのは当然だ」 という認識が形成されると、 疲れを問題のサインとして受け取らなくなります。
この慣れが喉声への気づきを妨げます。 疲れていても問題として認識されないため、 何十年も同じ状態が続くことがあります。
発声を客観的に評価する機会がない
声を客観的に評価する機会は 日常生活の中にほとんどありません。
外見は鏡で確認できます。 文章は読み返せます。 ですが声は出した瞬間に消えていき、 客観的に確認するためには 録音するか他者に評価してもらう必要があります。
こうした機会がなければ 自分の声の状態を客観的に知ることができません。 喉声の問題があっても それを確認する手段がないまま時間が経ちます。
声優を目指す、ボイスサンプルを作るといった 声を客観的に評価する必要が生まれたとき、 初めて喉声の状態が認識されるケースが多いです。
喉声は段階的に形成・固定化される
喉声は一度に形成されるものではなく、 長年の発声習慣の積み重ねによって 段階的に形成・固定化されます。
幼少期からの発声パターンが基礎にあり、 そこに環境の影響や身体の変化が加わりながら 発声の癖として定着していきます。
段階的に形成されるため、 変化が小さすぎて気づきにくい状態が続きます。 突然問題が発生するのではなく、 気づかないうちに問題が積み重なっているという構造です。
この段階的な固定化が 長年気づかれない理由のひとつでもあります。
気づいたタイミングが遅くても対処は可能
喉声が長年気づかれないまま続いても、 気づいたタイミングから対処することは可能です。
ただし固定化が進んだ喉声ほど 発声の構造を変えるために必要な取り組みは増えます。 長年定着したパターンを変えることには 時間と継続的な確認が必要です。
気づいたタイミングを問わず、 発声の構造として喉声を理解し、 外部からの確認を通じて変えていくことが 対処の方向性になります。
響く声が成立するための発声の構造については、 長年の喉声が変わるための発声の条件で詳しく扱っています。

