オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「これまで声について何も言われたことがなかった」という人から 喉声の相談を受けることがあります。
指摘されたことがないという事実は 問題がないことを意味しません。 指摘されない環境にいたことと、 問題がない状態にあることは別の話です。
このページでは、 喉声を指摘されたことがない人が陥りやすい状態を見ていきます。
指摘されないことへの安心感
日常生活において声について指摘をする人はほとんどいません。
聞き取りにくい声、通らない声、 こもった声であっても、 相手が直接指摘することは少ないです。 聞き取れなかった場合に聞き返すことはあっても、 「あなたの声は喉声です」と伝える人はいません。
そのため「指摘されたことがない=問題がない」という 誤った安心感が生まれやすくなります。
この安心感が喉声への気づきを遅らせる 主な要因のひとつになっています。
問題が顕在化しない環境にいる
喉声の問題が顕在化するかどうかは その人が置かれている環境に左右されます。
少人数との会話、静かな室内での発話、 短時間の会話が中心の環境では 喉声の問題が表面に出にくいです。
ところがマイクを使う場面、 大人数の前で話す場面、 長時間の発話が必要な場面になると 喉声の問題が顕著になります。
「これまで問題がなかった」という認識は これまでの環境で問題が顕在化していなかった ということを意味している場合があります。 声優を目指す、配信を始める、仕事で話す機会が増えるといった 環境の変化によって初めて問題が現れるケースは多いです。
自分の声の基準が喉声になっている
指摘されたことがない人は 自分の声の状態を基準として受け入れています。
喉声の状態で長年発声を続けていると、 その状態が「自分の声の普通」として定着します。 喉の疲れも、こもった聞こえ方も、 声が通らない感覚も 当然のこととして処理されます。
この状態では問題を問題として認識する視点が そもそも生まれにくいです。 基準がずれているため、 比較する対象がなければ気づくことができません。
声に関心を向けるきっかけがなかった
指摘されたことがない人の多くは 声に関心を向けるきっかけがなかった人でもあります。
声は日常的に使うものですが、 意識的に評価する機会はほとんどありません。 外見や言葉遣いと異なり、 声の質について客観的に評価する機会は 日常生活の中に少ないです。
声優志望、ボイスサンプルの作成、 マイクを通じた発信活動といった 声を客観的に評価する場面に入ったとき、 初めて喉声の問題が認識されるケースが多いです。
指摘されたことがないという状態は 気づくきっかけがなかったという状態でもあります。
指摘されないまま問題が固定化するリスク
喉声を指摘されないまま発声を続けると、 喉声の状態がさらに固定化するリスクがあります。
発声の習慣は繰り返しによって強化されます。 喉声の状態で発声を続けるほど、 その発声パターンが身体に定着していきます。
固定化が進むほど 喉声の状態を変えることに時間がかかるようになります。 早い段階で気づくほど対処の余地が大きく、 気づかないまま時間が経つほど 状態の変化に必要な取り組みが増えます。
指摘されたことがないことへの安心感は この固定化のリスクを見えにくくします。
指摘されなかった環境から出る必要がある
喉声への気づきは 指摘されない環境の外に出ることで初めて生まれやすくなります。
自分の声を客観的に評価できる場、 発声の専門的な観点からフィードバックが得られる環境、 マイクを通じた自分の声を確認できる状況。
こうした環境に入ることが 喉声の状態を認識するための条件になります。
「これまで指摘されたことがなかった」という事実は 過去の環境についての情報であり、 今の声の状態についての評価ではありません。
喉声でない声が成立するための条件については、 指摘されない声が成立する発声の構造で詳しく扱っています。

