オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「軟口蓋を上げると良いと言われたが感覚がつかめない」という相談を受けることがあります。
軟口蓋を上げることは 喉声の改善において重要な要素のひとつですが、 その感覚をつかむことは多くの人にとって難しいです。 なぜ難しいのかを理解することで、 取り組みの方向性が見えてきます。
このページでは、 軟口蓋を上げる感覚をつかむのが難しい理由を見ていきます。
軟口蓋は普段意識されない部位
軟口蓋は日常生活においてほとんど意識されない部位です。
口の中の天井部分の奥にあるため、 鏡で直接確認することが難しいです。 触れて確認することもできません。 動かそうと思っても どこにある何を動かせばいいのかが 感覚として捉えにくい部位です。
腕や脚のように 意識的に動かすことが日常的に行われている部位とは異なり、 軟口蓋は無意識に動いているものです。 この無意識の動作を意識的にコントロールしようとすることが 難しさの根本的な原因です。
上げているかどうかが分からない
軟口蓋を上げようとしても、 上げているかどうかが分からないという状態になりやすいです。
軟口蓋の位置は感覚として捉えにくいため、 上げているつもりで下がっていることがあります。 また上げすぎると鼻腔への通路が完全に閉じられ、 鼻音が出なくなるという別の問題が起きます。
適切な位置はどこなのかという基準が 感覚として形成されていない状態では、 上げようとする動作が 正しい方向に向かっているかどうかの確認ができません。
自分では上げているつもりでも 実際には変わっていないというケースは多く、 外部からの確認なしに判断することが難しい部位です。
軟口蓋の筋肉が弱い場合がある
軟口蓋を上げることが難しい理由のひとつに、 軟口蓋を動かす筋肉が弱い場合があります。
口蓋帆挙筋という軟口蓋を持ち上げる筋肉は、 日常的に積極的に使われることが少ないため 発達が不十分な状態になっているケースがあります。
筋肉が弱い状態では 上げようとしても十分な動きが得られません。 意識的に動かそうとするだけでは 筋肉が発達していないため 限界があります。
筋肉の発達には継続的な取り組みが必要であり、 短期間で感覚がつかめないことは 筋肉の状態として自然な状態です。
下がった状態への慣れがある
喉声の人は軟口蓋が下がった状態での 発声に長年慣れています。
この慣れは 軟口蓋が下がった状態を「普通」として 身体が記憶していることを意味します。
上げようとしても 下がった状態に戻ろうとする 身体の自動的な反応があります。 意識的に上げていても 注意が逸れた瞬間に戻ってしまうのは この慣れの影響です。
慣れを変えるためには 上げた状態を新しい「普通」として 身体が記憶するまでの繰り返しが必要です。 これには時間がかかります。
言葉だけの指示では伝わりにくい
「軟口蓋を上げて」という指示は 言葉だけでは伝わりにくいことがあります。
軟口蓋を上げたときの感覚の変化を 言葉で説明することには限界があります。 「あくびをするときのような感覚」 「口の奥が広がる感じ」といった表現が使われますが、 これらの表現が指している感覚が 人によって異なることがあります。
言葉の表現と実際の感覚がずれていると、 違う動作を「軟口蓋を上げる動作」として 認識してしまうことがあります。
感覚を言葉で伝えることの限界が 軟口蓋の指導を難しくしている要因のひとつです。
感覚をつかむための方向性
軟口蓋の感覚をつかむためには 以下の方向性が有効です。
声の変化を外部から確認しながら 軟口蓋の状態を調整していくことです。 感覚として捉えるのではなく、 声の変化として確認することで どの状態が適切かを判断する基準が作られます。
また軟口蓋を上げる動作を 単独で練習するのではなく、 発声全体の構造の中で 少しずつ変えていくことが必要です。
感覚をつかむことを目的化するより、 発声の構造として整えていくことが 結果として軟口蓋の機能を改善する方向性になります。
響く声が成立するための発声の構造については、 軟口蓋が機能した発声の成立条件で詳しく扱っています。

