オンライン特化型の声優スクール・メイクリでは、 「息が多い声と少ない声、イケボに近いのはどちらなのか」という相談を日常的に受けています。
息の多さがイケボに関係していることは認識されていますが、 多ければ良いのか少なければ良いのかという判断が曖昧なまま取り組んでいるケースがほとんどです。 「息をたっぷり使えばイケボになる」あるいは「息を抑えれば芯のある声になる」という前提のまま進んでいると、 どちらに向けて調整すればいいかが分からないまま時間が過ぎることがあります。
こうした前提のズレがあるままでは、 息の量を変えても声の印象が意図した方向に変わらない状態が続きやすくなります。
このページでは、 吐息の量と声の状態の関係、およびイケボとの関係を見ていきます。
息の量と声の質の関係
声を出すとき、 声帯を通る息の量と声帯の振動のバランスが、 声の質に大きく影響します。
息が多すぎると、 声帯がしっかり振動できず、 声に芯がなくなります。
息が少なすぎると、 声帯が過度に締まりやすくなり、 声が硬くなります。
この二つのバランスが取れている状態のとき、 声帯の振動が安定し、 倍音が整いやすくなります。
イケボとして機能する声は、 この息と声帯のバランスが適切に取れている状態で成立します。
多ければ良い、少なければ良いという単純な話ではなく、 バランスの問題として捉える必要があります。
息が多すぎる声の特徴
息の量が多すぎる発声には、 いくつかの共通した特徴があります。
声に息っぽさが目立ちます。 声の輪郭が薄くなり、 何を言っているか聴き取りにくい状態になりやすくなります。
マイクを通すと息の音が強調されます。 生声では「ソフトな声」として聴こえていても、 録音や配信では息の音が前に出て、 声の輪郭がさらに薄くなります。
声に芯がないため、 長時間話しても相手に届いている感覚が薄くなります。 声量を上げても輪郭が保たれにくく、 通らない声になりやすくなります。
倍音が整いにくくなるため、 響きが薄く、 イケボとして機能しにくい状態になります。
息が多すぎる状態は、 柔らかく聴こえる一方で、 伝達の効率が下がりやすいという問題を持っています。
息が少なすぎる声の特徴
息の量が少なすぎる発声にも、 いくつかの共通した特徴があります。
声が硬くなりやすく、 圧迫感や緊張感が出ます。 力が入っているように聴こえ、 聴き手に負担を与えることがあります。
喉に余計な力が入りやすくなり、 声道が狭くなります。 倍音が整いにくくなり、 こもりやすい状態になることがあります。
長時間話すと喉が疲れやすくなります。 声帯に負担がかかりやすい状態で話し続けることになるためです。
マイクを通すと硬さや詰まりが強調されやすくなります。 力みのある声は、 マイクを通してもそのまま届きます。
息が少なすぎる状態は、 力強く聴こえる一方で、 聴き手にとって負担になりやすいという問題を持っています。
イケボに近い息の状態とはどういうものか
イケボとして機能する声の息の状態は、 多すぎず少なすぎず、という表現では曖昧です。
より具体的に言うと、 声帯が自然に振動できる量の息が安定して使われている状態です。
この状態では、 声帯の振動が安定し、 倍音が自然に整います。 声に芯があり、かつ硬さや圧迫感がない。 マイクを通しても輪郭が保たれやすい。 長時間話しても喉が疲れにくい。
こうした特性が揃います。
息の量を多くしようとか少なくしようとかを意識するよりも、 声帯の振動が安定している状態を確認する方向が有効です。
息の量は声帯の振動を安定させるための要素であり、 それ自体を直接調整しようとすることは難しいものです。
なぜ息の量の調整は感覚でつかみにくいのか
息の量を適切に調整しようとしても、 感覚だけではつかみにくい理由があります。
出している側の感覚と、 聴いている側に届いている音とではズレが生じます。
息が多すぎている場合でも、 本人には「自然に話している」という感覚があることが多く、 息っぽさに気づかないケースがあります。
息が少なすぎている場合でも、 本人には「しっかり声を出している」という感覚があり、 硬さや圧迫感に気づかないケースがあります。
録音して確認することが有効な手段ですが、 何を基準に評価するかが分からなければ、 録音を聴いても判断できません。
息の量の状態を正確に把握するためには、 評価基準と外側からの確認が必要です。
息が多い声が生まれやすい状況
息の量が多くなりやすい状況として、 よく見られるパターンがあります。
「柔らかい声を出そう」「やさしい声にしよう」と意識しているとき、 息の量が増えやすくなります。 柔らかさを演出しようとして息を多く使う習慣がつくケースがあります。
緊張しているとき、 呼吸が浅くなり、 息の量が安定しにくくなることがあります。 その状態で話すと息の量が不安定になります。
マイクを意識しすぎているとき、 息の量が変わることがあります。 意識しすぎることで自然な発声が崩れるケースがあります。
こうした状況では意図せず息の量が増えやすくなり、 声の輪郭が薄くなる原因になります。
息が少ない声が生まれやすい状況
息の量が少なくなりやすい状況にも、 よく見られるパターンがあります。
「力強い声を出そう」「低い声を出そう」と意識しているとき、 喉に力が入りやすくなり、 息の流れが制限されることがあります。
緊張して体が固まっているとき、 呼吸が詰まりやすくなります。 息の量が少なくなり、 声が硬くなる状態が生まれます。
長時間話し続けたとき、 疲れによって呼吸が浅くなり、 息の量が減りやすくなります。
こうした状況では意図せず息の量が少なくなり、 声が硬くなる原因になります。
息のバランスはイケボの土台のひとつ
ここまで見てきたように、 息の量が多すぎても少なすぎても、 イケボとして機能する声の状態にはなりにくくなります。
息の量はイケボを構成する要素のひとつですが、 直接コントロールすることが難しい要素でもあります。
息の量を意識して調整しようとするよりも、 喉の力が抜けているか、声帯の振動が安定しているかという 別の要素を確認することが、 結果として息のバランスを整える方向につながります。
息のバランスを含めたイケボの発声条件の全体像と、 声の状態として何が成立条件になるかについては、 息の量と声の響き|イケボが成立する発声バランスとはで詳しく扱っています。


